子どもがほしくてできる人、まだいらないと思っていたのにできた人、そして子どもがほしくてもできない人。世の中はいろいろな人がいる。
「僕は子どもがほしくないタイプ。最初はそう思っていても、
子どもができればかわいいと思うものだよと言われますが、もし思わなかったら大変なことになるでしょ」

シンゴさん(40歳)はそう話す。ただ、“遺伝子を残したい”と思ったことがないわけではない。彼は地方の旧家のひとり息子。小さいころから家を継げと言われてきたが、それに反発して東京の大学に入学した。
「
両親はもう僕のことはあきらめて、妹が婿をとるという形になっています。僕自身は、名前を継ぐようなたいそうな家ではないと思っているんですけどね。遺伝子なんて断ち切ったほうがいいとさえ思ってる」
そうは言っても彼は人生に絶望しているわけではない。ただ、自分の遺伝子は家名と同じように、後世に残すほどのものではないと思っているだけ。
「昔つきあった彼女とそういう話をしていたら、『
子どもがほしいと思わない人は、どこか歪んでいるんだと思う』と言われました。確かにそうかもしれません。ただ、世の中にはそういう人間もいるということです。それを知ってもらいたいと思うのは不遜(ふそん)かもしれませんが」
子どもを巡る発言には、みんなナーバスになっている世の中だが、「ほしくない」と思う人もいるのだ。もちろん、それを非難することも誰にもできない。
「友人の中には、最後、誰にめんどう見てもらうのかと問うヤツもいますが、子どもがいる人ってみんなめんどうみてもらいたいと思っているのかと逆に言いたい。
子どもがいようがいまいが、自分の人生は自分で完結させるべきじゃないですかねえ」
子どもいらない、というと人間的に欠陥があるようにも思われると語るシンゴさん、その胸中は案外複雑なようだ。
<文/亀山早苗>
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