1969年にサンフランシスコで創業されたGAPはショッピングモールの建設ブームと共に爆発的に店舗数を増やし、子供から大人まで幅広い層に愛される「アメリカのイケてるブランド」の代表格になりました。
しかし『CNN』によると、徐々にベビーブーマーたちから見放され、ミレニアム世代に至ってはほとんどGAPに関心を示すことなく成長。現在のブランドイメージは「パッとしない」に変わってきています。

サンフランシスコのGAPフラッグシップ店(C) David Tran
筆者の周囲で聞き込みをしてみると、どの世代のアメリカ人女性からも「平凡なデザインなのに意外と高い。同じ値段ならZARAやH&Mの可愛い服を買いたい」という答えが返ってきました。
「つまらないデザイン」という印象が強い上、傘下のオールドネイビーほど安価でなく、きれい目なデザインの多いバナナ・リパブリックや、アスレジャーに徹したアスレタのような特徴もなく、中途半端な立ち位置になってしまっているのが敗因のようです。
中には、「そんなブランドあったね。最近まったく行ってないや」と存在さえ忘れていた40代主婦や、「僕はバナリパ(バナナ・リパブリック)、彼女はアスレタでよく買い物するけど、GAP着ている子はクラスにまったくいないよ」という男子高校生もいました。
アメリカ人はプチプラ依存?オフプライス店にディスカウントショップも
『CNN』ではさらに「オールドネイビーの独立はアメリカ人のプチプラ依存の象徴」とし、有名ブランドの型落ち商品が格安で手に入るTJマックスやマーシャルズといった“オフプライス店”が好調なことに注目。
メイシーズ百貨店が大型店の敷地内にオフプライス専門スペースBackstage(バックステージ)をオープンさせたことや、昨年のホリデーシーズンにノードストローム百貨店の売上が1.6%下落したのに対し、同オフプライス店のノードストローム・ラックは売上を4%伸ばしたことを紹介しました。
今は
メットガラに現れたカニエ・ウェストのように、「ターゲット」などディスカウントストアでもトレンドを押さえた服を安く買えてしまう時代。GAPより安くてセンスのいい服を見つけるのは簡単なのです。
また、興味深いのは不調のGAP店の多くが立体駐車場を持つような巨大ショッピングモールに入っており、好調なオールドネイビーやTJ マックス、ターゲットなどは店のすぐ前に車が停められる小規模なモールにある点。
アナリストは「わざわざ巨大なショッピングモールを歩き回るなんて面倒という消費者が増えている」と分析、立地の悪い店舗の多いGAPの閉店はやむを得ない処置だとしています。
売上減少やそれに伴う店舗の閉鎖は、中途半端なブランディングによる誤った価格設定とパッとしないラインアップ。そして、かつて同ブランドの成長を後押しした巨大ショッピングモールから客足が離れていることに原因がありそうです。確かに筆者の住む町にある巨大モールにも、最近、空き店舗が目立つようになっています。
Sources:「
Forbes」「
CNN」「
CNN」「
Business Insider」「
Business Insider」
<文/アメリカ在住・橘エコ>
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アメリカ在住のアラフォー。 出版社勤務を経て、2004年に渡米。ゴシップ情報やアメリカ現地の様子を定点観測してはその実情を発信中。