オダギリ ジョー「自分が納得できない仕事はやっちゃダメだと思います」
オダギリジョーさんが、長年温めてきたオリジナル脚本を自ら映画化した『ある船頭の話』が公開になりました。ある少女との出会いによって、人生が狂い始める渡し舟の船頭の物語を、柄本明さん主演で描いたヒューマンドラマです。
――流行りの日本映画とは一線を画す、非常に美しく、挑戦的な作品でもあります。撮影はクリストファー・ドイル(『恋する惑星』『天使の涙』『花様年華』)ですが、いわゆる彼の代名詞といわれる揺れるような映像とは全く違います。
オダギリジョー(以下、オダギリ)「クリスには、ほとんどFIXで、動かない画をやりたいと最初から伝えていました。古き良き日本映画のようなものにしたいと。クリスも、“古き良き日本映画”というワードにすごく興奮して喜んでいました。とてもいいコラボレーションが出来たと思っています」
――新潟県でロケーションされていますが、壮大な自然に「ここは日本なの?」と感じました。同時にそう思うことは、自然が失われていることの表れでもあるなと。撮影地を探して日本各地を回られた感想を教えてください。
オダギリ「今もキレイな場所はたくさんあります。俳優としてロケに行くときにも、『ここ、すごいな』と感じる場所も多いです。日本の原風景というか。それって有難いことだと思いませんか?
たとえば世界では、見渡す限り砂漠のなかで暮らしている人や、雪や桜の景色を見たことがない人もいる。そうしたなかで、これだけ様々な景色を見られる日本はやっぱり素晴らしいと思うし、こうした作品を海外の方にも観てもらうことには意味があると思います」
――撮影監督クリストファー・ドイル、衣装ワダエミ、音楽ティグラン・ハマシアンと、世界的なスタッフが参加しています。これもオダギリさんがいいキャリアの積み方をされてきた賜物かと。ご自身のキャリアについてどうお感じになりますか?
オダギリ「自分のことを客観的に判断するならば、いつの間にか今に流れ着いた感じです。『上手く行ってますね』とおっしゃる人もいれば、『なんでそんなところに行くんだ』と言う人もいると思います。ただ、ひとつひとつに妥協せず、自分のやりたいことを見失わず、やれてきた結果がここなのかなという満足感のようなものはあります」
――仕事のスタンス、ルールがあれば教えてください。
オダギリ「基本的に、自分がやりたいと思える作品しかやらないです。人生あと何年、俳優をやるか分かりませんが、そんなに何本もやれないとしたら、自分が面白いと思えない作品に時間を渡したくないじゃないですか。自分が納得できない仕事はやっちゃダメだと思います」
本作で長編映画監督デビューを飾ったオダギリさんにインタビュー。本作で挑戦したこと、仕事のスタンスなどを聞きました。
『恋する惑星』のクリストファー・ドイルが撮影
自分のやりたいことを見失わず、やれてきた結果が、ここ
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『ある船頭の話』は新宿武蔵野館ほかにて全国公開中