加藤雅也・56歳が考える、年をとってからカッコよくなる男とは
北方謙三さんの小説「抱影」を映画化した『影に抱かれて眠れ』が、全国で順次公開され、今の時代には少なくなっているだろう男の生きざまが突き刺さると評判を集めています。
横浜で抽象画家として活動しながら、酒場を経営している男・硲冬樹。彼を慕う男が抗争に巻き込まれたことで、街に渦巻く闇にのみ込まれていきます。本作で主人公の冬樹を演じた加藤雅也さん(56)に取材。本作での役作りや、加藤さんのこだわりなどについて聞きました。
――北方さんワールド全開のハードボイルドな作品での主演ですね。
加藤雅也さん(以下、加藤)「最初はAK-69が演じているヤクザの役を読んでくれって言われて脚本をもらったんです。いい役だなと思っていたら、いつの間にか、『冬樹先生をやってくれ』ということになっていきまして」
――そうなんですか? 最初に思っていた役と変わるのは難しくないのでしょうか。
加藤「映画は主演するほうが面白いですから。とはいっても、もちろんいい映画なら、ですけどね。変な映画の主演ならやりたくないし、この映画なら主演より脇役のほうが面白そうだという作品もあるけれど、今回はいい映画だったからね。もちろん、いいですよと」
――演じるうえで気を配ったところを教えてください。
加藤「この人はどうしてここに流れ着いたんだろう、どういう生活をして、どんな絵を書いているんだろうといった、バックグラウンド的なことをすごく考えました。それによって、そこにいるだけで、醸し出せるものが出てくるというか。最近はそういうものが役作りとして大事だなと思っているので」
――セリフがなくても、佇まいだけで、その人のことが伝わってくるということでしょうか。
加藤「派手なアクションとかではなくて、何もしていなくても、何か匂いを出せないかというね。そういう俳優になりたいと思っているので、今回の作品はすごく面白かったですね」
――冬樹として立っているだけでとてもステキでしたが、加藤さん自身が考えるかっこいい男とは?
加藤「自分のスタイルを持っている人でしょうね。ファッションひとつにしても、生きざまの見える人っているじゃないですか。例えば、ショーケン(萩原健一)さんとか、キース・リチャーズとか、スタイルを持ってるなと感じるし、若いときよりも年を取ってからのほうがかっこいい。だからスタイル、こだわりでしょうね」
――加藤さんが年を重ねていくうちに、こだわるようになったものはなんでしょうか。
加藤「常に新しいものに進化していくことかな。過去にとらわれずに、新しいことをやる。仕事においても、ライフスタイルにおいても。人間って、年を取れば失敗を繰り返して賢くなって、同じような失敗を繰り返さなくなると言われるけれど、それは失敗しない社会で生きているだけとも言える。僕はなんでもチャレンジしていきたい。
昔、こういう映画に出たとか、そんなことはどうだっていい。今何をやっているのか。もちろん、過去を否定はしないし、良かったと思っているけれど、それを踏まえて、どう変化していくかだと思いますね」
立っているだけで匂いを感じさせる俳優に
過去にとらわれずに、何にでもチャレンジしていきたい
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『影に抱かれて眠れ』は全国順次公開中 オフィシャルサイト




