“献血ポスターがセクハラ”騒動に「女性は献血が少ないから」の声。日赤に現状を聞いた
日本赤十字社が、人気漫画『宇崎ちゃんは遊びたい!』 (丈著、ドラゴンコミックスエイジ刊)とコラボした献血PRポスター・キャンペーンについて、今年10月中旬に勃発した騒動は記憶に新しいと思います。
「宇崎ちゃん」の、大きな胸を強調した萌えマンガ的なポスターに対して、「過度に性的で女性差別なのか」について多くの声が飛び交いました。その中で、「女性の献血に対する貢献度が低さがそもそも問題なのでは」という意見も盛り上がりを見せていたことをご存知でしょうか? そんな女性の献血状況を知るべく、日本赤十字社に話を聞いてみました。
まず事の発端となった同ポスターは、ヒロインの宇崎ちゃんが「センパイ! まだ献血未経験なんスか? ひょっとして……注射が怖いんスか~?」と呼びかけているもの。献血を行う際に条件を満たすと、先着で『宇崎ちゃんは遊びたい!』のクリアファイルが貰えるというキャンペーンの告知でもありました。
同ポスターを新宿駅で見かけた米国人男性が10月14日にTwitterで画像をツイートすると、すぐにさまざまな意見がやり取りされ、神奈川県弁護士会所属の太田啓子弁護士は、「環境型セクハラしてるようなもの」と指摘しました。同ポスター・キャンペーンに問題があるのかどうか、セクハラなのかどうか……ということに関しては人それぞれの考えがあり、いまだにはっきりとした結論は出ていません。
騒動に対し、一部では、「そもそも女性はあまり献血をしていないのだから、女性を無視した献血ポスターになるのは当たり前」という意見も見受けられました。これに対し「そもそもしたくてもできない理由がある」「女性の献血人数が少ないのと、女性を無視していいのとは、別問題では?」「女性にハンデがあるのは確かなのだから、男性にどんどん献血してもらえるよう、男性向けの宣伝をしましょう」とさまざまな声が集まります。確かに、女性は月経や妊娠・出産、ほかにも無理なダイエットなどでただでさえ貧血になりやすいので、献血に行きづらい事情がありそうです。
そこで、日本赤十字社に、今回の騒動をふまえ、献血に関する疑問を取材しました。
「本キャンペーンは、作品のファンの方々に対するノベルティの配布を目的としており、ポスター等による一般の方へのPRを目的としたものではございません。また、これまでも多くの漫画やアニメ作品にご支援いただき、ご好評を得てきたことから、本キャンペーンも献血にご協力いただけるファンの方を対象として実施したものです。しかしながら、さまざまなご意見を頂戴していることにつきましては、真摯に受け止め、今後の参考とさせていただきます」(以下、日本赤十字社・広報)
まず、ポスター・キャンペーンに関しては、あくまでも『宇崎ちゃんは遊びたい!』のファンの方向けのものだったということです。なお、「献血PRのポスターについては、『献血推進キャラクターけんけつちゃん』や『献血バス』およびイメージキャラクターをあしらったものが一般的」だそう。そして早速、男性と女性の献血人数の差について聞いてみました。
「平成30年度の献血者申込者数(延べ)については、男性が約360万人、女性が約170万人であり、献血者数(延べ)については、男性が約340万人、女性が約130万人です」
これは、予想以上に男女差があるのではないでしょうか。ではなぜ、女性は男性よりも献血に対するハードルが高いと言われるのか、ひっかかりやすい基準はあるのか、踏み込んで質問しました。
「男性と女性の基準等に、一部、相違はありますが、(国より)定められた基準(※)に基づき、献血にご協力をいただいております。定められている採血基準の中で、何にひっかかるか、適合するのかは、個人差があるため、一概に申し上げることはいたしかねます」
「いざ採血してみなければ、採血可能かどうかはなんとも言えない」ということで、どうやら日本赤十字社としては男女差に対しての見解を提示することはできないようです。ただ、国が定めた基準を改めて確認すると、男女で明確に差があるのは、一年に献血できる回数・総献血量。また、体格差を考えると50kg以上という体重制限で引っかかってしまう確率も女性の方が高そうではありますね。
<400ml全血献血の場合>
・一年に献血できる回数と総献血量:男性は3回以内(1200mL以内)、女性は2回以内(800mL以内)
・体重:男女50kg以上
平成30年度の厚生労働省の調査によると、30~39歳の体重の平均値は、男性・69.2kg、女性・53.6kg
コラボキャンペーンやポスター以外にも、街頭では献血の呼びかけを行っている人もよく目にします。「○型の人が何人足りません~~~!」という声、よく聞きませんか? 日本赤十字社曰く、「過不足なく輸血用血液製剤を医療機関にお届けできている」とのことですが、こういった活動の背景には、血の提供数減少などがあるのでしょうか。
「近年、一人あたりの献血量の増加などにより、以前と比べて少ない人数で必要な血液量を確保することができており、献血者数は全体的に減少傾向にあります。一方で、10代から30代の献血者数は、この10年で約35%も減少しており、全献血者数に占める若い世代の割合は減少しています。献血可能人口が減少し続ける中、将来の献血基盤を支えていくためには、若い世代のご協力が必要です。また、直近の2年間では、10代の献血者数は増加していますので、引き続き皆様のご協力をいただきながら、必要な血液量の確保に努めてまいります」
今回はあまりよくない形でポスター・キャンペーンが注目されてしまいましたが、今後は誰もが献血に行きたくなるような形で注目を集められることが望ましいですよね。
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安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律施行規則
献血基準
<文/女子SPA!編集部>
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