“ネットいじめ”の加害者ってどんな人?普通の人でもなる可能性が…
2019年10月に神戸の小学校で発覚した教員同士のいじめは、その手口の残虐性に注目が集まった。また、韓国では元KARAク・ハラさんの自殺の原因がネットいじめとも噂され、“大人のイジメ”は今、改めて大きな社会問題となっている。その背景と実態に潜む人間の闇に迫った。
【前回記事】⇒役員に逆らったら丸刈りにされ…職場イジメの壮絶
ネット上では、しばしば“集団いじめ”にも等しい炎上やバッシングが起こるが、彼らはなぜ暴走するのか。ネットウオッチャーのおおつねまさふみ氏は、昨年起きた常磐道のあおり運転事件にまつわるネットリンチが非常に象徴的だと語る。
「あおり運転で暴力を振るった男の助手席にいた“ガラケー女”の身元を突き止めようと、ネットの特定班が男のSNSフレンドを見て、別人を当事者と断定してしまった。その方は顔や名前が晒され、生活にも影響が出たため、名誉毀損で訴える旨の記者会見を開きました」
群衆によって落ち度があると判断された人に、過剰なほどの制裁・私刑が行われるのが“ネットいじめ”の恐ろしさだ。
「加担している側は、自分が嫌いなだけの相手を『社会全体が嫌っている』と思い込んで攻撃していることが多い。おそらく“いじめている”という自覚がある人はほとんどいないのではないでしょうか」
実際、加害者になるのはどのような人物像なのか。
「以前、芸人のスマイリーキクチさんが’89年に発覚した残忍な殺人事件の実行犯だとする誹謗中傷の被害に遭いましたが、デマを広めていた人の中には、ごく普通の会社員も多くいた。
SNSでキクチさんを犯人扱いする情報を鵜呑みにして“間違った正義感”が生まれ、その義憤から攻撃してしまったんです。最近も、朝鮮学校への補助金交付を求める弁護士会の声明に対し、ネット有志が150人以上を懲戒請求しましたが、あれも似たような例ですね」
また、ネットで“いじめられやすい人”の特徴もあるという。
「権力を振りかざす行為はネットではタブー。年収が高い、頭がいい、子持ちであるなど、本人は無自覚ににおわせてしまっているだけのことが、それを手にしていない人からすると鼻につくのです。
ママタレントの辻希美さんが、イチゴに練乳をかけただけで炎上してしまうように、一度“叩いてもいい人”認定されると、いくらでも揚げ足取りされてしまいがちです」
長い間可視化され、被害者に深刻なダメージを与えるネットいじめ。看過できない問題だ。
▼’19年に起きた主なネットいじめ案件
・2月1日 群馬県の女子高生が、「先生は信じてくれない」など学校でのネットいじめを訴えるメモを残し市内の踏み切りに飛び込み自殺
・4月~ ネットによる扇動を真に受け、弁護士に大量懲戒請求をした人たちが、逆に弁護士側から損害賠償請求訴訟を起こされた
・8月17日 常磐道あおり運転の“助手席のガラケー女”だとして、別人の女性が身元を晒されてしまう。彼女は名誉毀損で提訴する方針
・8月24日 加護亜依が事務所を契約解除された日に、辻希美がプールに行ったというブログを上げたら「行っている場合か」と炎上
・10月~11月 韓国で10月に歌手のソルリが、11月には元KARAのク・ハラが相次いで自殺。ネットいじめが原因のひとつと噂される
【おおつねまさふみ氏】
ネットウオッチャー。国内有数のネットウオッチャーにしてMiTERU代表取締役。インターネットでの炎上防止や炎上後の沈静化などに関するコンサルティングを行う
<取材・文/週刊SPA!編集部>
― 大人のイジメ地獄 ―