結婚して18年、家族とは仲良しだと携帯の待ち受け画面を見せてくれたのは、トモカさん(44歳)。学生時代からつきあっていた同い年の彼との間に子どもができたのをきっかけに結婚した。
「彼は本当に器の大きな人。私はいつも迷ってばかりいるけど、彼のおかげで楽しく生活してこられたと思っています」
ひとり息子は大学1年生。子どものころは体が弱くて、トモカさんは何度も仕事を辞めようと思った。だがそんなとき支えてくれたのが夫だ。
「私、就職した会社で、何度も転機を迎えているんです。入って2年くらいでいきなり産休と育休をとり、周りの目が厳しい時期もありました。だけどその会社の中でやりたいことが明確にあったので、育休明けから希望の部署に異動できるよう働きかけて……。
実際、希望の部署に配属されてからは残業も厭わなかった。それができたのは夫が、家事育児を率先してやってくれたから。夫だって全力で仕事をしているのに」
夫はいつでも自分の味方、そして家族を全力で守ってくれる。トモカさんはそう信じて疑わない。
「家ではけっこう夫にベタベタしているんですよ、今でも。息子が『いいかげんにして』と言うくらい。でも私、夫のことが大好きだから」
それなのに、トモカさんには今、つきあっている男性がいる。相手は8歳年下の既婚者だ。
「仕事関係で知り合って,いつの間にか仲良くなっちゃって」
恋することをやめられない。そこにいろいろな言い訳はついてくる
トモカさんは、かなり天然である。家族にもよくそう言われると笑う。罪悪感などまったく感じさせない口調なのだ。
「私には幸せな家庭がある。彼もそれなりに大変だけど家庭を壊す気はない。でも、私と彼、恋に落ちてしまったんですよね。お互い、帰るところがあるから恋愛も輝く。そんな気がするんです。もちろん、いいことだなんて思っていないけど、でも恋って楽しいじゃないですか」
正直な人なのだ。続けて彼女は、「家族には家族がもっている私のイメージがあると思う」と言った。
「私は,普通の妻とか母親からは少しはずれているかもしれないけど、夫と息子がもっている私のイメージはあると思うんですね。
でもそのイメージが、私という人間すべてではないような気がします。私の中には家族の知らない私がいる、というか。そこを引き出してくれるのが恋人の存在じゃないかしら」
それゆえ、恋をすると人間の幅が広がるというのがトモカさんの意見。頷(うなず)けるところもあるように思う。
「家庭が平和だから外で恋をする。そういう人間も少なからずいると思います。家庭が幸せでなければ恋も楽しいものではなくなるから」
世間的な善悪は別として、「恋をしやすい人」は、いくつになってもどういう状況にあっても、恋することをやめられないのかもしれない。そこにいろいろな言い訳はついてくるものである。
<文/亀山早苗>
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