“不妊治療をがんばりすぎて妊娠しにくい体になる”という矛盾
不妊治療のベルトコンベヤーに乗せられてはいけない
――それもストレスになりますね。
放生:気持ちだけではありません。多くのクリニックで行われている体外受精は、強い排卵誘発剤を使って人為的に刺激を与え、複数の卵を成熟させて、たくさんの卵子を採る方法です。先ほど、AMHの値が低いから体外受精をすすめられるとお話ししましたが、ただでさえ卵巣予備能の低い状態から採れるだけの卵をとったら、あっという間に卵巣が空っぽになってしまいます。そしてそこで妊活は強制終了です。
――体外受精をした結果、赤ちゃんができないと突きつけられてしまう、ということもあるわけですね……。しかも不妊治療の費用って、高額なんですよね?
放生:地域やクリニックによって違いますが、タイミング法は1回2000円~3000円。人工授精は2万~3万円。体外受精は40万円から80万円、なかには120万円というところもありますね。
――120万円!
放生:だからこそ、ベルトコンベヤーに乗せられて流されるのではなく、カップルでどういう治療をしてくのかを話し合い、自分たちがイニシアチブをとりながら、妊娠を目指してほしいと思っています。納得して治療を受けることで、ストレスも軽減されるはずですから。
いい不妊治療クリニックの見分け方
――そのほか、不妊治療にあたって、気をつけるべきことはありますか?
放生:誤解して欲しくないのですが、私は人工授精や体外受精などの高度生殖医療を否定しているわけではありません。人工授精は男性側に不妊の要因があるカップルの光明となりましたし、体外受精は赤ちゃんを諦めざるをえなかった人にも可能性を開きました。
体外受精が成功しなくて当院に来られた方でも「体外受精をもう一度試してみては?」とアドバイスすることもありますし、ステップアップを決めたカップルには信頼できる医療機関を紹介しています。
不妊治療は赤ちゃんを授かる選択肢として重要なものです。しかし、先ほど言ったように、流されて治療を受けていると、希望とは違う結果となったときにやりきれない思いが残ってしまいます。
ステップアップを急がなくてもいい。ときに休んだり、“ステップダウン”をしてもいい。カップル自身が治療の舵取りをし、赤ちゃんを迎えるこころとからだをつくっていくことが大切だと思います。
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では「赤ちゃんを迎えるこころとからだ」をどう作ればいいのか?次回はその点を伺います。
【放生勲(ほうじょう・いさお)医師】
1960年、富山県生まれ。こまえクリニック院長、内科医。87年、弘前大学医学部卒業。97年、東京大学大学院医学博士課程修了(医学博士)。99年、東京都狛江市に「こまえクリニック」を開院。2000年、「不妊ルーム」を開設。不妊に悩むカップルのカウンセリング、フォローアップを行い、2000組を超えるカップルを妊娠に導いている。著書多数、近著は『卵巣セラピーで妊娠体質をつくる』
<文/女子SPA!編集部>
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