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実在のセクハラ騒動を映画化した『スキャンダル』。主演シャーリーズ・セロンが語る

『ワイルド・スピード』シリーズや『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(’15年)などハリウッド超大作で圧倒的な存在感を放つシャーリーズ・セロンは、プロデューサーとしての顔も持つ。妻や恋人役など、女性が男性の引き立て役となることが多いハリウッド映画の現状を変えるべく、『タリーと私の秘密の時間』(’18年)や『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』(’19年)などを自らプロデュースし、等身大で魅力的な女性像をスクリーンに投影しているのだ。  そんな彼女が最新作『スキャンダル』の題材に選んだのは、’16年にアメリカを揺るがした実在のセクハラ騒動だ。

実際のセクハラ騒動の映画化をプロデュース

シャーリーズ・セロンさん

シャーリーズ・セロンさん 写真:REX/アフロ

 全米人気ナンバーワンのテレビ局FOXで働く女性キャスターたちが、業界で帝王と崇められるロジャー・エイルズCEOを告発した事件である。同企画に着手したのは、MeTooやTime’s Upなど一連のセクハラ撲滅運動が起きる前のこと。それでもこの題材に惹かれたのは、「一人の女性として、ずっとセクハラにつきまとわれてきたから」とセロンは説明する。特に、女優に転向する前にいたモデル業界での経験が影響しているという。 「モデルに向いている人もいるけど、私が求めていることとはかけ離れていた。何より若い女のコがクソみたいな立場に置かれていたことにいらだちを覚えたの。ただ、『スキャンダル』を作りたいと思ったのは、これがテレビ業界に限った話じゃないから。畑でアボカドを摘む女性も、銀行で働く女性も同じ。女性が安心して働くためにはセクハラのない労働環境が不可欠でしょ」  本作のプロデューサーを買って出たセロンは、監督の選定をはじめ、ニコール・キッドマン、マーゴット・ロビーというトップ女優のキャスティングに成功。さらに、自身も女優としてキャスターのメーガン・ケリー役を演じることになった。

役作りのために行ったこととは…

 メーガン・ケリーといえばアメリカでは誰もが知る人気キャスターだけに、中途半端な役づくりでは観客を納得させることができない。10㎏以上増量してアカデミー賞主演女優賞を受賞した『モンスター』(’03年)など、役づくりのために肉体改造を厭わないセロンにとっても、これは新たな挑戦だった。 「ブロンド女性ってみんな同じルックスだと思っている人がいるけど、実際は全然違う。私がメーガンを演じるには大きな工夫が必要だったの」  そこで特殊メイクを依頼したのが、『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』(’17年)でアカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞したカズ・ヒロである。 「彼は、とても長い時間をかけてそれぞれのパーツのデザインをしてくれた。顔全体にマスクをつけていると思っている人がいるかもしれないけど、実はとても小さなパーツでできているの。これこそ彼の才能のなせるわざで、細部を変えるだけで全体の印象を大きく変えてくれたのよ」  特に苦労したのは目の形で、特殊メイクの影響で「眼窩から目玉が落ちてしまうんじゃないかと思ったときもあった」という。それでも長時間の撮影に耐えたのは、観客に一刻も早く自分であることを忘れてもらう必要があったからだと振り返る。そのかいあって、セロンとカズ・ヒロは今年のアカデミー賞で主演女優賞とメイクアップ&ヘアスタイリング賞に揃ってノミネート。カズ・ヒロは見事に2年ぶり2度目の受賞という快挙を成し遂げた。  実のところ、『スキャンダル』は一度製作中止の危機に陥っている。出資・製作を約束していたスタジオが、クランクインの2週間前になって撤退。多忙なキャストのスケジュール調整は不可能で、中止はやむを得ない状態だった。このとき一人で奔走し、新たな出資会社や配給会社を探しあて、予定通りクランクインに漕ぎ着けさせたのがセロンだったのだ。
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キャリアが社会現象とリンクしたのは初めて
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スキャンダル
’19年/アメリカ・カナダ/1時間49分 監督/ジェイ・ローチ 出演/C・セロン、N・キッドマン、M・ロビーほか 配給/ギャガ 2月21日より全国公開
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