愛と性ってむずかしい…/鈴木涼美×川瀬知佐子ロマンポルノトーク
ロマンポルノ・ナウ第二弾『愛してる!』(白石晃士監督)公開を記念して、主演のミサを演じた川瀬知佐子さんと、小説『ギフテッド』(文藝春秋刊)で芥川賞候補となった鈴木涼美さんとのスペシャルトークがおこなわれた。
場所は、『愛してる!』のSM監修にも携わった蒼月流さんがオーナーのTitty TwisterというバラエティSMバー。店内には縄や鞭なども飾られている。
『愛してる!』は、地下アイドルのミサ(川瀬知佐子)が、SMラウンジのオーナー(ryuchell)にスカウトされ、そこで強烈なカリスマ性を持つ女王様・カノンに惹かれてSMの世界に足を踏み入れていくというストーリー。そこで自分を解放できる快感に目覚めたミサは、地下アイドルと女王様、2つの世界を駆け上がっていくのだが……。
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川瀬知佐子(以下、川瀬):今回、鈴木さんが『愛してる!』を観てくださったとうかがっています。率直に、どんな感想を抱かれましたか?
鈴木涼美(以下、鈴木):思った以上に、本格的にSMを扱っていることにまず驚きました。私たちって、ボンデージとか女王様とか、ちょっとした知識は持っていますよね。でもそれはあくまでファッションとしてのSM。この映画は精神的なところまで深く描かれていると思いました。最初、ミサは騙(だま)されたような形でSMラウンジに連れてこられて、すごく怒ってるでしょ。そこからカノンという女王様に憧れて、どんどんその世界にはまっていく。そこがリアルな感じでした。
川瀬:ミサはありのままの自分を見つけていくんですよね。
鈴木:彼女はラッキーだったと思う。きっかけがないと自分が何を望んでいるかはわからないし、たどり着けませんよね。ミサはラウンジのオーナーに嗜好性を見抜かれてスカウトされたわけだけど、ミサ自身、心が開かれていなければ認められない。素直な女性だなと思いました。ああいう、強気だけど素直な女性は、川瀬さんに近いんでしょうか。それともまったく正反対みたいな性格だと感じました?
川瀬:ミサ自身は、私とは真逆な性格ですね。私だったら、ああいうふうにスカウトされても無視しちゃうと思います(笑)。ただ、ちょっと性格は荒いけど、自分が正しいと思ったことは貫くところは似ているかもしれません。
鈴木:芯の強い女性ですよね。
川瀬:鈴木さんはロマンポルノをご覧になったことがありましたか?
鈴木:旧作をリアルタイムでは観ていませんが、いわゆる伝説的な作品は何本か観ています。『キャバレー日記』(根岸吉太郎監督)は、ロマンポルノらしいファンタジーに満ちていて、クスッと笑えたりほろりとしたりで、楽しめました。きわどい表現はあるけど、女性が観ても嫌な感じはまったくないと思います。
川瀬:今回の『愛してる!』は、友人が母親と一緒に観てくれたらしいんです。母娘で鑑賞して大丈夫かと心配したんですが(笑)、よかったよーとふたりで感想を送ってくれました。そういう時代なんですね。
鈴木:昭和ブームじゃないけど、ちょっとレトロなエロさがおしゃれだったりするのかもしれません。ストリップ劇場に行っても、今は若い女性が観に来ていますもんね。みんな興味があるんですよね。
川瀬:ミサは、ありのままの自分をどんどんさらけ出せる女性ですが、なかなかそうできない人も多いと思うんです。好きなことを好きといえなかったり、人の目を気にしたり。
鈴木:そうですよね。好き嫌いが分かれるものに関して、自分が志向しているものを公にして批判されたらどうしようと思いがち。もちろん、わざわざ公表する必要はないけど、自分の大事な人や身近な人には正直に言ったほうがいいと私は思いますね。自分を隠して生きていくほうがつらそうだから。
きっかけがないと自分が何を望んでいるかはわからない
好き嫌いが分かれるものは正直に言ったほうがいい
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