田中美佐子、香坂みゆき…相次ぐ熟年離婚。別れを決意する「60代女性のポジティブな心理」
<亀山早苗の恋愛時評>
次々と報道される有名人の結婚離婚。その背景にある心理や世相とは? 夫婦関係を長年取材し『夫の不倫がどうしても許せない女たち』(朝日新聞出版)など著書多数の亀山早苗さんが読み解きます。(以下、亀山さんの寄稿)
離婚については、「ここに至るまでには、長い時間がかかりました」と田中はインスタグラムに記している。だがその後は、何かが吹っ切れたように出演番組で自ら離婚に触れたり、飲食店でばったり知人に会って、「この店、昔パパとよく来たのよ」と、「相手が返しに困るような話をしてしまった」と笑い話にするなど、日々を楽しんでいる様子がうかがえる。
田中美佐子ら60代、それでも離婚を決意する女性の心理
このところ芸能人女性の60代の離婚が続いている。話題になったのは田中美佐子。この6月、63歳にして28年にわたる結婚生活を解消した。 相手はタレントの深沢邦之。田中が35歳のときに6歳年下で自分の付き人でもあった深沢に「結婚しない?」とプロポーズした。のちに彼女は「結婚願望がすごく高まっている時期だった」と話している。 当時の収入格差は100倍とも言われたが、田中は「夫が売れなくてもいい」と発言。一緒に生活して楽な人で、私の仕事を理解してくれる人がいいとも話していた。2002年に長女が産まれると、家事や育児は夫の仕事になっていった。 田中は、変わらず仕事が順調、一方で深沢は娘が長ずるにつれ、家の中でも居場所を失っていったのではないだろうか。
2019年、田中が独立、夫婦で個人事務所を設立した。かつて付き人だった夫にも協力を期待していたのだろうが、一部報道によると深沢はあまり協力的ではなかったらしい。彼にしてみれば、この期に及んで妻の付き人はやりたくなかったのかもしれない。 21年暮れに、深沢は個人事務所の役員を退任、代わりに長女が役員となり、そのタイミングで彼は家を出たという。 そして22年12月、娘が20歳を迎えたこともあって、先日、離婚を発表した。
長く一緒にいればわかりあえるものでもないと知っている今の60代
結婚生活が長く、さらに「老いていくこの先」が見えているからこそ、今まで慣れ親しんだ相手と「可もなく不可もなく」穏やかに生きていこうというのが、今までの考え方かもしれない。 だが、今の60代、まだ老い先は長い。残りの30年、あるいはそれ以上を慣れ親しんではいるが「いるとうっとうしい」と感じる相手とは一緒にいたくないと考える女性のほうが多いかもしれない。ひとりでいることは怖くない。ふたりでいるのに孤独だったり、わかりあえなかったりするほうがよほど苦しい。 長く一緒にいればわかりあえるものでもないと、今の60代は知っている。60代は、80年代のバブル前夜、バブル全盛期を20代後半から30代で過ごしてきた世代。若いころに景気のいい時代を味わい、恋愛も自分から選び取ってきた。 いいときだけでなく、悪いときも心のどこかで「どうにかなるさ」とポジティブに考える人も多い。我慢することをよしとせず、自分のために生きることを厭(いと)わない最初の世代かもしれない。


