朝ドラ『あんぱん』44歳俳優の“ナチュラルな渋み”と存在感。「毎回の登場が新鮮」なワケ
今田美桜主演の朝ドラ『あんぱん』(NHK総合)でレギュラー出演する妻夫木聡は、実は本作が朝ドラ初出演の作品である。
第10週第50回の戦中場面で初登場。戦後を描く第16週第76回で再登場する。さらに第17週第82回と、再三登場するのだが、毎回不思議と新鮮な空気感を醸している。
男性俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、メリハリある演技で毎回の登場が新鮮だと感じる妻夫木聡の演技を解説する。
今田美桜主演の朝ドラ『あんぱん』で朝ドラ初出演を果たした妻夫木聡は、毎回、登場場面がなぜだか新鮮だと感じる。初登場は第10週第50回。戦時下の場面だった。
主人公・若松のぶと後に夫婦になる柳井嵩(北村匠海)が二等兵として配属された先に上等兵・八木信之介(妻夫木聡)がいた。嵩があわあわまごついているところへ、薄暗い廊下の奥からカツカツ軍靴を鳴らしてやってくる。
嵩の前にくるなり、顔を近づけて「気を引き締めろ!」と喝をいれる。そうして踵を返して再び廊下の奥へ戻っていく。『ローレライ』(2005年)など戦争映画への出演歴があるとはいえ、鬼軍曹的なキャラを妻夫木が演じること自体が新鮮な気がするが、初登場場面でそのキャラ設定を“軍靴カツカツ往復”だけで視聴者にパッと示す手際がいい。
ナチュラルな渋みが自然とビジュアルに加味され、ほどよく威厳がある八木役に説得力を持たせている。一方で単に鬼軍曹的ではなく、実は心底温かい心根の人で、軍隊では嵩が無事に帰還できるよう間接的にアシストしていた。
決してあからさまにアメとムチがあるわけではないけれど、八木役の多面的な性格を妻夫木はメリハリできちんと演じている印象がある。戦後になって再登場する場面でも、そのメリハリで役柄の新鮮味を醸す。
第16週第76回、高知新報に入社したのぶと嵩が取材で上京。街にあふれる孤児たちにのぶがカメラを向ける場面。孤児のひとりが隙をついてのぶのカメラをかっぱらう。路地から路地へ追いかけた先にひとりの男性がいる……。
毎回新鮮だと感じる妻夫木聡
メリハリで役柄の新鮮味を醸す
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