朝ドラ『あんぱん』44歳俳優の“ナチュラルな渋み”と存在感。「毎回の登場が新鮮」なワケ
愛を持って演じている再登場
再三の登場が不思議な空気感を醸す演技
八木は孤児たちに読み聞かせをしてやる。読み聞かせといっても少年少女向けの紙芝居などではない。もっぱら読書家らしくゴーリキーの名作文学などを読む。でもそれを実に楽しげに読み聞かせる。
子どもたちが帰ったあと、側で見ていた嵩が「八木上等兵」と呼びかる。さっきまでの愛の眼差しから翻り、八木は厳めしい表情にパッと変わる。嵩にギロリと向ける、こういう切り替えの演技もメリハリがあっていい。
のぶと嵩が高知に帰り、八木は一旦退場する。代議士・薪鉄子(戸田恵子)の元で働くためにのぶが上京した第17週で、八木が再度登場する。
第82回、盗みを疑われた孤児を味方するのぶが店員男性に絡まれているところへ、紙幣を手にした八木が登場(!)。のぶの左肩を右手でつかみ後ろに下がらせる。下がらせたと同時に左手で握る紙幣を店員の前に差し出して見せる。
あざやかな動作で「これで文句ないだろ」と台詞を決める。再三の登場だけれど、その都度視聴者の目には新鮮に写る。朝ドラ初出演の妻夫木聡は不思議な空気感を醸している。
<文/加賀谷健> 1
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