「秋山はハマり役なのに…」ドラマ『笑ゥせぇるすまん』低評価のワケ。23分の長さが致命傷? 評価逆転の糸口は
藤子不二雄Ⓐ氏の不朽の名作『笑ゥせぇるすまん』のドラマが、7月18日から全12話を3週にわけてPrime Videoで独占配信された。宮藤官九郎をはじめとした日本屈指のクリエイターたちが脚本を務め、斉藤由貴や濱田岳、中川大志といった幅広い世代の人気俳優が各話のゲストとして登場する。
また、喪黒福造のキャストが配信直前まで明かされず、多くの予想がSNSを賑わし、かなりの注目を集めて満を持して配信された。ただ、配信後はお世辞にも盛り上がっているとは言えない。Amazon内のレビューは8月7日現在、星2.8と何とも言えない評価にとどまっている。昨年Netflixで配信された『地面師たち』をはじめ、配信ドラマがブームになる傾向は高い。にもかかわらず、なぜ『笑ゥせぇるすまん』は評価されていないのか。その理由を考えたい。
とにもかくにも喪黒役の秋山竜次(ロバート)の影響が大きい。『笑ゥせぇるすまん』はブラックコメディ色が強く、ユーモラスでありながらも作中には緊張感がある。ただ、アニメをインスパイアしているのか、かなりデフォルメした演技が見られ、全体的にどことなくコントっぽい。もちろん、秋山がハマり役であることは間違いない。ポップで見やすくなっているが、その反面、作品の怖さが薄れて“らしさ”が失われている印象だ。
また、時間も関係している。本編は1話あたり23分と一般的なドラマよりも短い。ただ、アニメはその半分の10分ほどとさらに短い。原作やアニメの『笑ゥせぇるすまん』は起承転結が明確で、テンポよくストーリーが進む。23分では脱線する必要が生まれ、実際に会話劇や顔芸が随所に散りばめられている。このことが結果的に秋山の演技にくどさを与え、視聴者、とりわけアニメファンをげんなりさせたのかもしれない。
また、SNSには「1話でリタイアした」というコメントが散見されている。1話は『たのもしい顔』。ただ、今回配信された全12話の中でも1話はかなり変則的だ。
立派な顔のせいで周囲から常に頼られ、そのことに辟易している中年男性・頼母子(たのもし)雄介の物語になっている『たのもしい顔』。演じるのは山本耕史だ。作中では“顔”がメインテーマのエピソードゆえに、秋山同様に山本の顔芸がこれでもかと映し出されている。また、顔芸と一緒に「その顔は『お母さーん、絵文字の使い方なんかおかしいよ』の顔です」など、同エピソードの脚本を手掛ける宮藤の“クドカン節”も少なくない。
そして、他のエピソードは中盤で喪黒の“仕掛け”が入るが、終盤まで喪黒はただただ頼母子の話を聞くばかり。ラストになり、ようやく転と結がババっと押して寄せてくる。『笑ゥせぇるすまん』は先述した通り、テンポの良さとわかりやすさが大きな魅力だ。ただ、名刺代わりとなる1話のテンポ感が独特のため、今後のエピソードも同様の内容や展開になると予想して、2話以降の視聴を見送った人は珍しくないかもしれない。
23分を「長い」と感じさせる
1話で視聴を見送られた理由
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