アラサー女はピュアすぎる恋愛相談に答えられない【シングルマザー、家を買う/52章】
<シングルマザー、家を買う/52章>
バツイチ、2人の子持ち、仕事はフリーランス……。そんな崖っぷちのシングルマザーが、すべてのシングルマザー&予備軍の役に立つ話や、役に立たない話を綴ります。
娘に、好きな男の子ができたらしい。
娘はちびまるこちゃんと同じ3年生で、これまで“好きな男の子”といっても、毎日「あの子がいい」「この子がいい」とコロコロかわるような、本当の恋ではなく、かわいらしいものだった。
しかし今回は、なにやら様子が違う。
夕飯を食べ終え、娘と息子、私で『痛快TV スカッとジャパン』(フジテレビ系)を見ていたら、「胸キュンスカッと」という、タイトル通りキュンキュンする青春シーンを描くミニドラマが始まった。娘はこの「胸キュンスカッと」が何よりも大好きで、自分のメモ帳にシチュエーションとセリフを書き写しているくらいなのだ。
私も小3のころ、名番組である『クイズダービー』(TBS系)をノートに一言も漏らさず書き写していたことがあったが、それとはまたジャンルが違う。我が家は毎週録画でこの番組を見ているため、胸キュンスカッとのキュン台詞があれば、何度も巻き戻しては再生させられ、娘はそれを必死にノートに書き写す。私がテレビから目をそらし、ケータイをさわろうものなら「ここ、キュンとするから本気で見て!」と凄まれるのだ。どうやら、娘の胸キュンスイッチがこの番組によって始動しはじめてしまったらしい。
暇さえあれば「胸キュンスカッと」を見せられる日々が続いたある日、娘がいきなり神妙な面持ちで私に話しかけてきた。
「ねぇ、ママはいま、好きな人いるの?」
ドキッとしながら娘の目を見ると、その眼は真剣である。だからこそ私は真剣に答えようと本当に好きなアイドルの名前を挙げると、娘は私の両腕を掴んでもう一度聞いてきた。
「ちがうの。テレビの中の人じゃなくて、仕事の人とか! ママのことを知ってる人で!」
おう……。そうか、お互いが認知している中で好きな人を探さないといけないのか。厳しいな。でもどんなに頭を巡らしてもそんな存在がいないわたしは、「……いない」と答えるしかできなかった。すると娘は、「ちょっと聞いて」と私をソファに誘導した。
なんだか嫌な予感がする……。どうしよう。
娘はソファに座り、私に「ウチ、好きな人できた」と告白してきたのだ。
……どう対応するのが正解なのか。ここで思い切り乗って「どんな子? 誰?」とワクワクしながら聞いた方がいいのか、「ふーん」と流した方がいいのか。今後、ちゃんとこういう恋愛相談をされるママになるには一体何が正解なのか!
……わからない、わからない!
私は親には相談しないタイプだったし、ていうか、なんで相談してくるの! 3年生でそんなシチュエーションになるなんて、予想より早すぎて何の準備もしてない!!!
息子はその横で必死に紙を破り続けている。今日もらったばかりの給食の献立表を必死に、何かにとりつかれたかのように破り続けているのだ。そうだ、子供の動きとしてこれが正解のはずなのだ。なのに、なんだ、ここにいる娘は確実に恋する女子の顔をしている。
胸キュンに目覚めた娘
暇さえあれば「胸キュンスカッと」を見せられる日々が続いたある日、娘がいきなり神妙な面持ちで私に話しかけてきた。
娘の初恋にうろたえる母
1
2
|
|
『シングルマザー、家を買う』 年収200万円、バツイチ、子供に発達障がい……でも、マイホームは買える! シングルマザーが「かわいそう」って、誰が決めた? 逆境にいるすべての人に読んでもらいたい、笑って泣けて、元気になる自伝的エッセイ。
|



