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ドラマ版『恋空』を今さら観てドン引き、なんでこれが流行したんだ?

 新作ドラマの収録延期で過去のドラマが再放送されたり、動画配信サービスでも過去作品がたくさん見られる昨今。ですが社会の常識は変わっていくもので、中には「昔はこれOKだったの?」と思うドラマもあります。  たとえば2006年に超ヒットした小説『恋空』の同名ドラマ(2008)。今年GYAOで5月4日まで3話まで無料公開されましたが、ネット上では「感動した」という声と同時に、「ただのDV男じゃん」と呆れる声もありました(実は当時から批判もあり、平均視聴率6.3%と低迷したようです)。  そこで、少女漫画コンシェルジュのライター・和久井香菜子さんに観てもらったところ、見事にクソミソな評価でございました…。ひとつの意見として、参考にしてみてくださいね(以下、和久井さんの寄稿)。

『恋空』の内容はざっくりこんな感じ

映画版『恋空』(DVD)

映画版『恋空』(DVD)

 ガラケー時代に大ブームになった「ケータイ小説」。そのひとつ、携帯Webサイト魔法のiらんどに掲載され、ランキングで160日連続一位という快挙を成し遂げた『恋空』という作品があります(2006年に書籍化され、上下巻で計200万部売れた)。  2007年に三浦春馬と新垣結衣で映画化したら大ヒットしたので、2008年に瀬戸康史と水沢エレナでドラマ化したんだそうです。  さて『恋空』がどんなお話だったかというと、地味な女子高生が、クソヤンキー男子高生につきまとわれて怒濤のように大変な目に遭ったけど、脳みそお花畑なので大丈夫でした、っていう感じです。だいたい美嘉は、花を摘んで渡されると「花が可哀相だよぅ」と言ってみたり、父親と腕組んで歩いてみたりする「いい娘」です。この時点で心が薄汚れている筆者は全く共感できませんでした。  映画は、まあその、美嘉の携帯を拾ったヒロが連絡先を勝手に消去するとか、図書館での行為でできた子どもだから「本」って名前にするとか、ヒロが金髪の見た目通りの頭の悪い発言はするものの、2人の心が通い合っていく様子は、まだ描いていたと思います。  ところがドラマ版はすごい。

典型的なDV男すぎてドン引き

ドラマ版『恋空』(DVD)

ドラマ版『恋空』(DVD)

 美嘉が夏祭りで男子といい感じに焼きそば食ってるところに、突然ヒロがやって来て、美嘉の持っていた焼きそばをスガっ!と払い、男子の胸ぐらつかんで殴り倒し、美嘉の手を引いていきます。  なんてDV男なんだろうとこの時点でびっくりだけど、「なんでこんなことするの?」と聞く美嘉にヒロは「そんなの好きだからに決まってんじゃん」と言います。  昔、夫にデリヘルで働かされ、ボコボコに殴られてた女性の話を聞いたことがあります。「どんなに殴られても、愛してるからやるんだって言われると、なんか納得しちゃって」って言ってました。「好きだから度を超すんだ」っていうの、まさにDV男の常套句のような気がします。  しかも、ヒロの暴力はそこに留まりません。

「俺の土下座には価値がある」と思っているヤバイ男

 やきそば男と美嘉の関係に嫉妬したヒロが、夜中に学校の窓ガラスを割って歩き、それを焼きそば男に濡れ衣着せて(どうやったらそんな高度なことができるのかしら?)退学にさせてしまいます。「やべえ、やっぱりDV男だよ」と思ってると、改心したヒロは焼きそば男を呼び出し、悪かったとガバっと土下座します
「俺の土下座には価値がある」と思っているヤバイ男

写真はイメージです(以下同)

 えーと、弁護士の先生に聞いたんですが、DV男ってすぐ土下座するらしいですよ。自尊心が膨れ上がったヤツが「この俺様が頭を下げるんだ」っていうするのが土下座なんですね。「俺の土下座にどれだけの価値が?」とは思わないようです。人に頭を下げるのが屈辱的と思う時点でヤバい。

ア然…初チューから押し倒し妊娠

 そして美嘉に「キスは、お互いに少しずつ心を通わせてから」とか言われてお預け食らってたけど、ヒロは部屋に連れ込んでその気にさせてとうとう初チュー。  と思ったら「優しくするから」とか言って先に進んでますけど、「何万年でも待つ」とか言ってたのに早くないですか。それに今までなにか、心を通わせる何かがありましたっけ……? ただヒロが暴れて、美嘉が困ってただけですよね?  そして「優しくするから」とか言って初チューのその場で押し倒して、美嘉は妊娠します。  えーと、優しくはしたけど、避妊はしなかったということなんですかね、優しさとはいったい。  しかしこの物語がすごいのは、DVのヒロの周囲にいる人間たちがお花畑なことです。
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脳内お花畑人間1・焼きそば男
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