読モデビューを果たした後。幸いにも私が予想していたような冷たい言葉や噂話は耳に入ってきませんでした。
というのも後ろめたさと罪悪感から人と距離を置いていたこともあって聞こえてこなかっただけかもしれません。もしくは、人は思っている以上に人に興味がないってこと。私が考えすぎていただけなのでしょう。
もうみんなあのスナップ写真のことなんて忘れているだろうと思っていたある日。その雑誌を毎月愛読しているA先輩から。
「高木ちゃん、◯◯の読モかー。」
「私なんて読モと名乗れるほどのものではないです。ほかの人たちなんてビックリするほど可愛いですし、きっともう呼ばれることもないと思います。」
「
そもそも、どうやってなったの?」
「
編集部の方から声をかけられて……」
この後です、怖かったのは。
「えー、すごーい」と言った先輩の目がまるで空洞のよう……。
笑顔で私のことを見ているはずなのに、深い闇?沼?のようなどこを見ているのかわからない生気のない目をしていたのです。口角がキュッと上がった口もとから出てきた言葉には抑揚がないし。
あまりいい感じには思ってなさそうだなと違う話題に切り替えたのが正解で、A先輩の表情はすぐにいつもどおりに。
後から聞いた話によると、A先輩は読モになりたくていろいろな雑誌の読モ募集に自薦で写真を送っていたそうです。そうとは知らずに無神経な発言をしてしまったな、と反省しました。自分では隠したいことでも、ほかの人にとっては喉から手が出るほど手に入れたい何かかもしれないと。
この一件から、A先輩とはなんとなく距離が出来てしまったのは悲しかった……。
― 読者モデルの裏話 VOL6―
<文/高木沙織>
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高木沙織
「美」と「健康」を手に入れるためのインナーケア・アウターケアとして、食と運動の両方からのアプローチを得意とする。食では、発酵食品ソムリエやスーパーフードエキスパート、雑穀マイスターなどの資格を有し、運動では、骨盤ヨガ、産前産後ヨガ、筋膜リリースヨガ、Core Power Yoga CPY®といった資格のもと執筆活動やさまざまなイベントクラスを担当。2021年からは、WEB小説の執筆も開始。Instagram:
@saori_takagi