妻のDVと奇行で家庭が壊れ…コロナ離婚をする男性の胸のうち
新型コロナウイルスが猛威を振るい、感染は免れても生活に変化が訪れた人も多い。仕事はもちろん、そして大事な家庭も――。約2か月の自粛生活により、夫婦関係にピリオドを打った家庭のリアルを追った。
5月25日、東京都をはじめ5都道県の緊急事態宣言がついに解除された。現状では欧米に比べ感染者数、死亡者数とも抑え込んでいるものの、夫婦間に致命的な軋轢が生じてしまった家庭も多い。「コロナ離婚」に踏み切る夫婦が続出しているのだ。
「夫婦が揃っても一家団欒できず、相手の生活態度への不満で喧嘩が絶えない。まるで熟年離婚のよう」と顔を曇らすのは、夫婦間のトラブル解決に長く携わる日本結婚教育協会顧問の棚橋美枝子氏。コロナ離婚の原因は、限られた空間で、長期間にわたって同じ空気を吸い続けたことにあると分析する。
「外出自粛が2か月近くも続けば、夫婦喧嘩は起きて当然。いい関係を保つには適度なコミュニケーションが必要なのに、それを軽んじてきた夫婦ほど危機に直面しやすい。親世代が見せてきた『定年後に距離感が近くなり、顔を合わせて不快に生きるぐらいならば熟年離婚をする』という選択に少なからず影響を受けている可能性もあります」
特に、再就職へのハードルが高いロスジェネ世代はコロナ不況に恐怖を抱きやすく、経済的不安が夫婦仲の悪化に直結しやすいと棚橋氏は警鐘を鳴らす。
「夫婦は、常に新しい価値観に更新していかないと、変化に対応できず突発的な出来事で関係が崩れやすい。夫婦関係が理想から離れてしまうときほど踏ん張り時なのですが、コロナ禍というストレス過多な現実に押し流され、離婚という選択をしてしまうのは残念ですね」
「僕の家庭を崩壊させたのは、間違いなくコロナウイルスです」
都内で夫婦二人でバーを経営する安達裕介さん(仮名・42歳)は、5月上旬にコロナ離婚を決意したひとり。妻の長年の夢だった“都内の新築戸建て”を手に入れたばかりだったが、この2か月で生活が急変した。
「客足が落ちた3月中旬頃から、妻が従業員にまで罵詈雑言を浴びせるように。月に70万円かかる店の固定費に加え住宅ローンの返済もあり、先行きが不安だったのでしょう。もともと攻撃的な性格だったので放置していたところ、さらに悪化してしまって……」
妻は安達さんを一切無視するようになったうえ、濡れた洗濯物を自宅ガレージの地面に広げて干すなどの奇行が始まった。
「さらに都の休業要請を受け入れ収入が絶たれると、『無収入のダメ男』『死ねクズ!』など家中に貼り紙をするように。宗教団体から“空間除菌装置”を高額で購入したことも判明。もう、目の前が真っ暗になりました」
ストレスで体重が5㎏も減った安達さんは藁にもすがる思いでDVの相談窓口に電話をかけたが、繋がることはなかったという。
「男性が相談できるのは週2回という限られた曜日だけで、面談は完全予約制でした。その間に店の補助金申請や家賃交渉もあり、そのまま相談できず追い込まれました……」
そんななか、自宅待機中の中学生の息子にも妻が言葉の暴力を振るっていたことが判明する。
「泣いている息子の『お父さん、もう我慢しなくていいよ』という言葉が決め手になりました。妻も結婚当初は過保護なぐらいだったのに……それでも許せません」
安達さんは離婚を決意し、親権を争うため離婚調停へ。しかし、5月中旬現在、コロナの影響で家庭裁判所の判断が延びておりまだ結果が出ていない状況。「毎日苦しいです」と肩を落とした。
【棚橋美枝子氏】
結婚教育研究家として公演、セミナーなどを開催。男女関係だけでなく、職場の人間関係や女性の起業まで幅広いテーマに携わる
―コロナ離婚が急増中―
<取材・文/植木ゆうじ>