新しいことにチャレンジしようとしたとき、「前例がないからダメ」とか「これがうちのやり方だから」といって一方的に蓋をしてくるパワハラ上司、いますよね。
彼らがよく使うのが「伝統に訴える論証」という屁理屈です。この屁理屈は「優れているからこそ、長く続いてきたのだ」という前提を根拠としています。実際、そう言われるとちょっと反論しにくい空気に包まれますが、よくよく考えれば
「長く続いてきた」ことと「それが優れていること」は必ずしもイコールではありません。
単に面倒だから変化を拒んできただけだったり、上司の顔色をうかがう事なかれ主義の悪しき結果だったりします。
ただ、この「伝統に訴える論証」を使ってくるのは、主にその道のベテランや古参社員なので厄介です。
「君は知らないだろうが~」「私の経験上では~」など、昔の自慢話とセットでチャレンジの芽を潰しにかかります。
不幸にもこうした上司にあたってしまった場合、彼らの信じる「常識」や「伝統」がもはや普遍的なものではないという事実を理解させることが、ひとつの解決方法になります。
もうそれ常識じゃないよ! と言っても通じなければ…
例えば、つい先日もツイッターにこんな発言がありました。
「
ネクタイは紳士の必須アイテムであり、社会に生きる男は着けなければならん」
たしかに、「男性社会人はネクタイを着用すべし」というのは、かつての常識でした。しかし、今やネクタイ必須は常識ではなくなった。先進的なベンチャー企業などでは、むしろノーネクタイが主流です。さらにいえば、ハイヒールやパンプスの強制に抗議する「#KuToo」などのムーブメントも起こっている。こうした時勢の中で、なおネクタイ必須と主張するのは、前提となる常識がすでに常識ではなくなっており、極めて根拠が薄弱です。
このように、パワハラ上司の「伝統に訴える論証」に対しては、「
その常識はすでに常識ではないのでは?」と理解させること。昔の常識や価値観に固執する“
かなり痛い人”という空気を作っていくことがひとつの対抗策になります。
ただ、どんなに常識が変わったことをロジカルに説明しても、まったく受け入れられない人も多々いますから、そんな時は「また、始まった」程度に考え、その上司を介さずにチャレンジを実現できる方法を考えた方が賢明です。
<取材・構成/女子SPA!編集部 イラスト/カワセミ>
【桑畑幸博氏】
社会人ビジネススクールである「慶應丸の内シティキャンパス」シニアコンサルタント。’01年の立ち上げから参画し、マーケティング・思考力・コミュニケーションスキルの講義で人気を博す。これまで資生堂、カゴメ、ブリヂストンなど100社以上の一流企業、および多数の自治体で研修を手掛ける。新著に
『屁理屈に負けない!――悪意ある言葉から身を守る方法』(扶桑社刊)