夫と顔を合わせる時間が長くなり、夫婦間の軋轢(あつれき)も強まっていく。口を開けば相手のあら探しになる。それを子どもには見せたくなかった。
夫は、昼は息子と話したり勉強を教えたりもしていたが、だんだんと部屋に閉じこもるようになり、しまいには夕食の時間もずらすようになっていった。
「そんなことをユウタに愚痴ったら、『うちもそうだよ』って。あちらはまだ幼い子がふたりいるので彼自身も子育てが大変だし、奥さんが子どもを怒鳴るようになって困っている、と。
だからとにかく奥さんを労(いたわ)ってあげてと言いました。奥さんをフォローしてあげれば、奥さんは子どもには八つ当たりしないから、と。そうしたらそれがうまくいったみたいで感謝されましたね」

「彼に会いたい。もう毎日、頭の中がそれでいっぱい」
信頼感が募っていくと同時に、ふたりの情熱も高まっていった。声が聞きたいからと時間を合わせてそれぞれの地域で外出して電話で話したりもした。
「彼がどうしてもオンラインでエッチしたいと言い出したときは、恥ずかしいけどうれしかった。
深夜、夫と子どもが寝静まってからひとりでお風呂に入りながら、オンラインセックスのまねごとをしました。だんだんエスカレートしていくから、声が出ないようタオルを噛みしめて。それがまたそそると彼に言われて……」
ひとりエッチなどしたことのなかったマキさんが、深夜のバスルームやトイレでオンラインセックスをしながら、ひとり悶えていたのだという。
「彼に会いたい。もう毎日、頭の中がそれでいっぱい。彼もそうだと言ってくれました。今度会えたら、こんなこともしたい、あんなこともしようと盛り上がっています。
彼も私も、子どもを棄てるわけにはいかない、でも一緒にいる時間がもっとほしい。そう思っているんです。どうしたらいいのか、どうしたらもっと彼に会えるのか。今はそればかり考えています」

会えないからこそ愛が濃密になっていく。お互いに出社日が増えていって、もうじき彼に会う日が決められそうだという。彼女の声が震えていた。
「彼に会っただけで私、卒倒しちゃいそうな気がするんです。なんとか時間をやりくりして朝から夕方まで一緒にいられるようにしようと話し合っています。
私たち、出会う運命だったんだと思う。この先、その運命に従って生きていくのがいちばんいいような気がするんです。彼はいざとなったらふたりだけでどこかへ逃げようと言うけど……」
恋愛感情の濃度が上がりすぎると、人はあらぬ方向へと走りがちである。
子どものことだけはきちんとしよう、しなくてはと彼女はつぶやくが、そうやって自分に言い聞かせておかないと走り出してしまう自分を無意識のうちにわかっているからなのではないだろうか。危険と隣り合わせの恋なのかもしれないと不安に思えてならなかった。
<文/亀山早苗>
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