『ハウルの動く城』では、主人公・ハウルの役を木村拓哉が演じています。宮崎駿アニメでも屈指のイケメンキャラのハウルを木村が演じているのですが、紳士ながらもミステリアスなハウルと木村の声が、劇中で見事にシンクロしていました。
『ハウルの動く城』
そして、ソフィーに魔法をかけた荒地の魔女役を、美輪明宏が演じています。美輪と言えば先述した『もののけ姫』でもモロを演じていますが、『ハウルの動く城』でも、若い男性が大好きで、手下を使ってハウルの心臓を狙う、という強烈なキャラクターを演じています。魔女から魔力を奪われて弱々しい老婆になった声も、全て美輪が演じており、あまりの豹変ぶりに驚かされます。
さらに、物語序盤でソフィーにからむ兵士A・Bを、これまた安田顕と大泉洋が演じており、少ししか出演しない役柄までも豪華俳優人で固めていることに驚きます。大泉は他にも、案山子に変えられた王子・カブも演じています。
(画像:TEAM NACS公式サイトより)
『となりのトトロ』 サツキとメイのお父さんはあの人
『となりのトトロ』では、サツキとメイのお父さん・草壁タツオ役を糸井重里が演じています。入院している母親に代わってサツキとメイの面倒を見る、温かくて優しいお父さんのキャラクターと、糸井の素朴な声がマッチしています。
糸井は、『となりのトトロ』のキャッチコピーも担当しており、作品には「このへんないきものは、まだ日本にいるのです。たぶん。」という言葉が添えられています。他にも『蛍の墓』『もののけ姫』『魔女の宅急便』など、糸井はジブリ作品の多くのコピーもてがけています。
『知ろうとすること。』 (新潮文庫)
ジブリ作品では声優をメインキャストに使わないことが多く、これに対しサツキ役を演じた日髙のり子(58)は、『トトロ』Blu-ray発売トークイベントで、「声優にもチャンスが欲しいなぁと思いますね」としつつも、「
糸井重里さんのお父さんは、声優では出せない飄々とした、ちょっと照れくさそうな雰囲気が凄く良かったです」とコメントしています。
さかなの子・ポニョと5歳の少年・宗介の物語である『崖の上のポニョ』では、宗介の母親のリサを山口智子が演じました。あっけらかんとした性格ながらも、貨物船の船長をしている夫の耕一が仕事で帰ってこられないと拗ねるなど、かわいらしくも心優しいリサは、山口のイメージそのままでした。
津波で町が水に覆われてしまったとき、自分の働く「ひまわり園」にいる老人たちを心配し、リサは見に行こうとするのですが、リサと一緒に行きたいと言う宗介に対し、「
宗介ね、いまこの家は嵐の中の灯台なの。真っ暗ななかにいる人は、みんなこの光にはげまされているわ」と、優しくも力強い母親の言葉で諭します。
リサのこのセリフは、公式サイト『金曜ロードシネマクラブ』(日本テレビ)が発表した、『崖の上のポニョ』の「名セリフdeキター!」ランキングで1位を獲得。リサの深い愛情と親子の絆を感じさせました。
(画像:山口智子公式サイトより)
また、同作品ではリサの夫・耕一(54)を長嶋一茂が演じています。
声だけで、キャラクターがもつ背景や物語の世界観まで表現してしまう、役者さんの演技に圧巻させられます。そして意外な配役ながらも、作品を見れば見るほど「納得」の配役であることに、改めて気づかされます。
<文/瀧戸詠未>