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保育士、シッターによる性犯罪は防げないの?性犯罪歴を隠して働ける現実

私たち一人ひとりの声も必要

――前田さんのお話を聞いて、業界以上に行政に一刻も早く動いて欲しいと感じました。 保育園前田「今回の事件に問題意識を持っている議員の先生はたくさんいて、実際に動いてくれています。ただ、『無犯罪証明書』の提出を義務付ける法案を作るのにはとても時間とパワーがかかるようです。  というのも、企業の案件ということで経済産業省、保育に関わる案件ということで厚生労働省、さらにはシッターの助成金を出している内閣府、犯罪履歴などの個人情報を扱う関係で法務省、と複数の省庁が管轄として出てくるからです。こうなると一担当者が包括できる問題ではなく、どこの管轄下で法案を作っていくのか、議論をすすめるのに異常な手間がかかるのです。まさに日本の縦割り行政の狭間に落ちてしまう問題と言えます」 ――そのような話を聞くと、「無犯罪証明書」の義務化は実現不可能のように思えてしまいます……。 前田「ですよね。けれど与党を中心とした議員が、この『無犯罪証明書』の提出を義務付ける法案を本年度秋の臨時国会に提出できるところまでこぎつけてくれたんです。これはかなりの進展だと思います。ただし、現段階の内容のままだと強制力を持った法案にはなっておらず、『無犯罪証明書』を出さなくても罰則はありません。いわば、『努力義務』になってしまうのですベビーシッター――「努力義務」ということは、出さなくてもよいということでしょうか。 前田「そういうことになりますが、まだまだ調整中です。世論が集まれば、政治家が本気で動きます。そうすれば縦割り行政の枠を超えて行政が動き、強制力をもった法案として実現されます。だからこそ私たち一人ひとりの声が必要なんです

#保育教育現場の性犯罪をゼロに

 前田さんは現在、子どもに関わる仕事につく人の「無犯罪証明書」の提出を強制力のある法案として国会で成立させるべく、SNSで「#保育教育現場の性犯罪をゼロに」作戦を広めています。このハッシュタグとコメントをつけて、各自がSNSで発信・拡散していくことで世の中の注目と声を集め政治を動かすというものです。  また認定NPO法人フローレンスは7月14日、保育教育従事者が無犯罪証明書を取得できる仕組み「日本版DBS(Disclosure and Barring Service)」の創設を求める記者会見を、厚生労働省で開催しました。  教育現場で事件が起きれば、責任の所在はどこにあったとしても、被害を受けるのは子どもになります。そして、今回のように被害者が出たから動くというのでは遅いのです。  シッター文化が社会に根付くことで、自由に働き自由に子育てができる人が増えます。そして笑顔で仕事も子育てもできる社会の実現に近づきます。今回の事件を通し、なぜこのような事件が起きたのか、一企業の問題として注意喚起するだけではなく、社会の問題として慎重に議論し自分にできることを考えていく必要があることを感じます。そして、そのタイミングがまさに今なのではないでしょうか。 <取材・文/瀧戸詠未>
瀧戸詠未
大手教育系会社、出版社勤務を経てフリーランスライターに。教育系・エンタメ系の記事を中心に取材記事を執筆。X:@YlujuzJvzsLUwkB
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