ときどき髪型をアレンジすれば、「似合わない」と笑い、学校で褒められたと話せば、「ふーん」と面白くなさそうな反応をする母親。それでも、毎日凝った手作り弁当を作ってくれるなど、愛情を感じないわけではなかったとノリコさんは話します。
「だからこそ当時は、母の言葉や態度に傷ついたり、素直に感謝できない自分が嫌な人間に思えて……自己嫌悪することが多かったです。情緒不安定でもあったり」
その後、大学時代に出会った『毒になる母親』という本によって心がとても楽になったとのこと。自分の母親ととてもよく似た例が紹介されているのに驚いたと言います。

『毒になる母親』キャリル・マクブライド (著), 江口 泰子 (翻訳)飛鳥新社
「親だから大切にしなきゃいけないって先入観を捨てることに繋がりました。私がしあわせになるためには、母親と離れることが大事なんだなと思いましたね。
だから、大学時代は一人暮らしのための費用を貯金し、卒業と同時に家を出ました。『私をひとりにするなんて冷たい子』って泣いたり怒ったりしながら何度も言われたけど、勝手に言わせとこうと」
以来、母親からくる他愛ない連絡も気が向くときにだけ対応するなど、母親というものを極力断ち切った上で自分の人生を大事にするようにしているというノリコさん。
「母が母であることをあまり意識しないようにしてますね。ただ、『大人同士』であるというだけ。そう考えるようになって、だいぶ楽になりました」
母親という存在を切り離すことで、ようやく自分らしくいられるようになったのだそうです。
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私が「手放して」よかったもの―
<文/森田 奈々 イラスト/ただりえこ>