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篠原涼子の横綱級の別格感。松嶋菜々子らとの出産後復帰の違いとは?

この頃の篠原涼子は落ち着いちゃった感があった

 13年前、「ハケンの品格」が放送されたとき、淡々とロボットのように時間どおりに仕事をこなす大前春子のキャラは新鮮だった。生き生きとしたエネルギーに満ちあふれているイメージから演技派へとチェンジしている最中で、自閉症児の母親役、アルコール依存症の役など、演技派に脱皮するきっかけにふさわしそうな役に挑戦し、俳優を育てることに定評のある蜷川幸雄演出の舞台にも出演していた。  蜷川の舞台「ハムレット」(01年)で知り合った市村正親と年の差結婚をしたのち、クールな刑事役を演じた「アンフェア」(06年 フジテレビ)が映画化されるほどヒット、そして「ハケンの品格」(07年)である。市村正親と出会った01年から出産する08年まで、篠原涼子は俳優として多様な役を演じて輝いていて、彼女の出演作は視聴率も高かった。第2子を出産した後に主演した「ラストシンデレラ」(13年 フジテレビ)までは。
「ラスト・シンデレラ DVD-BOX」ポニーキャニオン

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 その後は安定した活躍をする。東野圭吾のヒューマンドラマの映画化「人魚の眠る家」、大ヒット韓国青春映画のリメイク「SUNNY 強い気持ち・強い愛」、吉永小百合と共演した「北の桜守」(「半沢直樹」の堺雅人と夫婦役!)など主演も助演も的確に演じてきたが、それゆえにスター性から遠ざかっていったようにも感じる。この頃の篠原涼子はビッグプロジェクトに出演しながらも、別格感はなりを潜め、どこか落ち着いちゃった感があった。

「ハケンの品格」では四十代のリアルな自分で勝負してきた

 復活作となった「ハケンの品格」の場合、宣伝ポスターではゴールドのタイトなワンピースを着て、ハリウッド映画のようなゴージャスさで写っていて、スター性を強調していたが、実際のドラマでは、13年前と同じセンターパーツのロングヘアに地味なセーターにロングスカートと飾り気なし。太っているわけではないのだが、ドラマの主人公にしてはふっくらめ。もともと魅力のひとつであるふくよかなバストがセーターで強調されると、色っぽいというよりはいささか野暮ったく見えたが、それを隠さない。  それこそが四十代のリアルともいえるだろう。篠原涼子はいまのままの自分で勝負してきたのである。キャラクターものにはしない、血の通った人間を演じたいのだという篠原本人なのか番組サイドなのかわからないが意思表示なのかと思えた。

何かを演じるのではなく、“篠原涼子”の価値で勝負する意識

 実際、最終回で、AI と比較して、大前春子は心で勝負するのだというような展開になっていて、いろいろ割り切ったような態度をとりながらも、ほんとうに大事なもののためには手を差し伸べる熱いハートをもっている人物、それが大前春子ということを強調して終わった。  とはいえ、途中、前作でもあったやたらかわいい声で店内アナウンスするエピソードを今回もやっていて、かぶりものをかぶって猫なで声を出したり、着物を着て演歌歌手になったり、そのあたりはコント番組のようで、そういえば、若き頃、「ダウンタウンのごっつええ感じ」(フジテレビ)で笑いも鍛えられていたなあと思ったのだが。そこでわかったのが篠原涼子に流れる別格感の源流である。
 もともと歌手デビューして、俳優にシフトしていったので、何かを演じるのではなく、“篠原涼子”の価値で勝負する意識が根っこにあるのではないだろうか。しかも、小室哲哉の作詞作曲による「恋しさと せつなさと 心強さと」でダブルミリオン達成という偉業を成している。紅白歌合戦にも出ている。そんな彼女だから、13年ぶりに大前春子を演じることになっても、今の篠原涼子が演じたとき、どうなるかが第一に来たのではないだろうか。
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鈴木保奈美、松嶋菜々子らとの出産後復帰との違い
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