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篠原涼子の横綱級の別格感。松嶋菜々子らとの出産後復帰の違いとは?

鈴木保奈美、松嶋菜々子らとの出産後復帰との違い

 結婚して子どもをふたり生み育て、夫は癌を克服している、というなかなかハードな数年を送った肝っ玉かあさん的なイメージは、ほかの、結婚、出産を経た俳優たちとはなんだか違うのである。
 たとえば、鈴木保奈美は復帰したとき、大河ドラマ「江~姫たちの戦国~」(NHK)で波乱万丈な人生をおくった織田信長の妹・市を演じた。上野樹里、宮沢りえ、水川あさみの母というカロリーの高さ。戦国武将の家族という思い十字架を背負って気丈に生きる役を復帰作にし、その後もずっと強いワーキングウーマン的な役を演じている。「SUITS/スーツ」(フジテレビ)の二の腕にむだな贅肉のなさはアラフィフには思えない。
「家政婦のミタ」バップ

「家政婦のミタ」バップ

 また、松嶋菜々子の復帰作は「家政婦のミタ」(日本テレビ)で、「やまとなでしこ」(フジテレビ)に代表される華やかなお姫様キャラだった過去とガラリ変えて、全身黒ずくめで笑わないミステリアスな家政婦を演じて、大注目を浴びた。そうやってショック療法的な復帰をした後は、いつまでも変わらない美魔女的キャラに戻っている。朝ドラ「なつぞら」(NHK)では自分の美しさに自信のある母親を演じていた。
 矢田亜希子はバラエティー番組を経て、「ギルティ~この恋は罪ですか~」(日本テレビ)で毒母を演じて、再放送した「愛していると言ってくれ」(TBS)や「やまとなでしこ」のかわいい2番手から大きく変わりつつも美しさは健在とSNSを賑わせた。

少なくとも、正直なんだろう、篠原涼子は

 たいてい、復帰後は、美を磨き込み、さらに演技派になりました、という印象を受けるのだが、篠原涼子の場合、それがまったくない。むしろ落ち着いちゃった感をそのまま役に投影し、妻であり母であり、それ相応に歳をとった篠原涼子が演じています、という感じ。  だから、「ハケンの品格」で大前春子が演歌歌手の格好をしたときも、変身ヒロインみたいに完璧に変身するのではなく、衣裳を着て歌えと台本に書いてあったからやっていますというような、大前春子のキメ台詞「それが何か?」というどこ吹く風感が吹き荒れていた。  それがいいのか良くないのかは観た人各々の判断であろう。少なくとも、正直なんだろう、篠原涼子は。いまの私を観て、と堂々と晒(さら)す、その強さが他の追随を許さない。 <文/木俣冬> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
木俣冬
フリーライター。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』など著書多数、蜷川幸雄『身体的物語論』の企画構成など。Twitter:@kamitonami
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