――された側が受け入れられないなど、一度きりの不倫が実質的な破綻を招いた場合はどうでしょうか?
長谷川「たとえば、一度きりの不倫がきっかけで別居に至り、別居状態が数年続いたなど、夫婦関係の破綻が証明できるような場合は、民法第770条第1項5号の『その他の婚姻を継続しがたい重大な理由』として離婚が認められるケースもあります。ほかにも、もともと破綻していた場合や、不倫をした側も離婚を望んでいる場合などケースバイケースではありますが、夫婦関係の破綻が認められない中で、一方が離婚を望まないケースでは、一度きりの不貞行為で一発アウトというのは難しいのが現状です」
――一度きりでは不貞行為として離婚理由に認められないとのことですが、その場合、相手に慰謝料を請求することもできないのでしょうか?
長谷川「
一度きりであっても、された側は権利を侵害されたことによる慰謝料を請求できます。逆に、不倫をする前から夫婦関係が破綻していた場合は、不貞行為が権利の侵害にはあたらないとして、慰謝料の請求権が発生しなくなります。慰謝料の請求権についても夫婦関係の実質を見るので、夫婦関係が破綻している中での出来事であれば、権利侵害がないとされるからです」
――セックスの有無や回数が不明でも、明らかに不倫関係だと思われる場合は、慰謝料や離婚を請求できますか?
長谷川「民法上ではセックスの有無が見られるので、
頻繁にデートをして、手をつないだりキスをしたりしていても、不貞行為には該当しません。そのため、配偶者の不倫を理由に慰謝料や離婚を求める場合は、セックスをしている証拠を押さえる必要があります」

――セックスをしている証拠とは、例えば2人でホテルに入って行く写真などでしょうか?
長谷川「ホテルにもさまざまな種類があるので、食事や会議でも使われるようなホテルだと、いっしょに建物に入ったということだけでセックスを立証するのは難しいでしょう。同様に、自宅や不倫相手の家も、必ずしもセックスをする場所ではないので、証拠としてはやや力不足です。そのような観点で言えば、ラブホテルであれば何をする場所かが明確なので、2人で入って行った様子だけで不貞行為があったと立証できます。一度きりだと不貞行為と認められにくく、言い逃れもできてしまうので、探偵業者に依頼する場合、複数回その現場を押さえることもあります」