「日本の性教育を変えて!」性教育YouTuberが国会議員に頼んでみた
看護師や助産師、保健師の資格を所有し、総合病院の産婦人科や精神科での勤務を経て、現在は、性教育系YouTuberとして活動するシオリーヌさん(28)。現在、自身初の著書『CHOICE 自分で選びとるための「性」の知識』が発売中です。
子どもたちや教師に向けた講演活動にも積極的に取り組む彼女ですが、政治家向けにおこなった講義をYouTube動画「国会議員に『日本の性教育を変えてください!』と頼んでみた」として2020年11月に投稿。Twitterをはじめ、さまざまな反響が寄せられています。
動画の様子をレポートしていくと共に、シオリーヌさん本人の感想も聞きました。
自由民主党の幹事長代行・野田聖子議員や国民民主党・伊藤孝恵議員らからなる超党派パパママ議員連盟は、政党の垣根を超えて、子育ての問題などへ取り組む議員連盟。シオリーヌさんは、子どもたちが置かれている性の実態、社会における性教育の課題や改善策などを提案していました。
2020年はコロナ禍で一斉休校に伴い、NPO法人が運営する妊娠の相談窓口に10代の子どもたちから多くの相談が寄せられていたと話したシオリーヌさん。自粛期間中に生活習慣が変化したことから「親御さんがいない自宅でパートナーと過ごし、また、例年では年度末に必ず行われる性教育の授業が行われなかったから」と、背景を解説しました。
平成30年に厚生労働省が発表した統計によれば、10代で人工妊娠中絶を経験したのは1万3588件と伝え、さらに、本人が願っていなかったはずの妊娠による乳幼児の死体遺棄事件を目立つことから「事前に避妊をする知識があったなら。避妊ができず失敗したときも緊急避妊(事後に妊娠を防止する手段)をするという選択肢を知っていたら。妊娠から21週目までであれば中絶できると知っていたら。中絶が間に合わなくても、育てられない場合の支援策を知っていたら」と、子どもたちに正しい知識が必ずしも行き渡っていない現状を憂いました。
その後、日本の学校で行われている性教育の実情を伝えたシオリーヌさんは「現状の性教育では受精や妊娠を取り扱っていますが、その経過は取り扱われていません」と、学習指導要領にある通称・歯止め規定を課題として指摘。実際の教育現場では「妊娠の経過を細かく伝えた授業を行い批判された学校もあり、教師の方からも『きちんとした情報を子どもたちに伝えて、意思決定をしてもらいたい』という願いを聞きますが、現場にたずさわる方を萎縮させてしまっている現状もあるとみなさんに知ってほしい」と、その実態を嘆きました。
日本国内の現状に思いを巡らせる一方で、世界の性教育の実情についても訴えます。
UNESCO(国際連合教育科学文化機関)が提唱している「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」は、人間関係やセクシュアリティ、性的行動など、性教育のまつわる8つのトピックを世界的にまとめた指針。シオリーヌさんは日本での性教育は「性行為の話に集中しがち」と指摘しながら、本来は「社会で生きるためのスキル」として解説。
一方、日本の教育現場では「学生のうちにはこういうことをしないほうがいい」とする方向性での主張が目立ちますが、禁欲を推進するカリキュラムは「初交年齢を遅らせる効果はない」などの指摘もあり、「事実にもとづいて子どもたちに意思を委ねる」という性教育の理想的な形を提案しました。
また、さまざまな学校での講演活動を経験してきたシオリーヌさんは「今求められている性教育の形を提案していきたい」と主張。この記事で先述している学習指導要領の歯止め規定の見直しや、UNESCOのガイドラインに沿った性教育の徹底、さらに、教師たちが柔軟な性教育を学べる機会の必要性や、助産師などの外部講師の活用、性教育に対する自治体の十分な予算確保などを陳情して、スピーチを終えました。
10代の人工妊娠妊娠中絶は“年間1万件以上”
禁欲教育は「初体験を遅らせる効果なし」

シオリーヌさん初の著書『CHOICE 自分で選びとるための「性」の知識』(イースト・プレス)
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