
そこからアヤコさんの夫を見る目が変わった。夫をひとりの男として見るより、やはり「できの悪い長男を教育する母」になってしまったのだ。
「夫の浮気は、あくまでも本人に責任をとらせたほうがよかった。今はそう思います。あのときは私が出ていったほうが終息が早いと判断してしまったんですが、夫は結局、私がなんとかしてくれると思ってしまったようで……」
さらに許されていると思い込んでいるので、それからも何かにつけて甘えてくるようになった。
「仕事の愚痴なんかも多いですね。私もフルタイムで働いているから,人の愚痴を聞いている暇はないんですが、夫は『アヤコはいつでも適切な判断をしてくれるから』と。
頼られていると思うとうれしいような気がしてがんばってしまうのが、私の悪いクセなのかもしれません」
夫はそんなアヤコさんの性格を見越しているのかもしれない。それはそれでバランスのとれた夫婦なのかもしれないが、「この関係はあと10年で崩壊すると思う」とアヤコさんは危機感を強めている。
「10年たったら、子どもは自分の世界をもっている。15年たったらふたりとも自立しているでしょう。そのとき夫婦が残って母と息子ごっこはできない。私が壊れてしまいます」

だからなんとか夫の精神的自立を促したいところなのだが、その方法が見つからないとアヤコさんは嘆く。
「子どもたちが自立していくのにともなって、長男を自認している夫のことも自立させていきたい。
たとえば受験とか友だち関係とかで子どもが迷ったとき、夫に相談させることも考えています。大人の男性と結婚したつもりでいたのに、今になってこんなことで悩むのもつらいんですが……」
最期は苦笑するしかないといった様子のアヤカさん。自立していたはずの夫の子ども返り、そしてそこからもう一度自立させなければならない妻の苦労ははかりしれない。夫が子ども返りするかどうかは結婚前には予測もできないことだから。
「子どもが生まれてから、子ども返りする夫を許してしまったのが私のミスだったかもしれません。あのときもうちょっときちんと大人になることを促(うなが)しておけばよかったとは思っています」
そもそもそうやって夫をコントロールしなければいけないことが妻の負担になっているとも言えるのだが……。夫婦のバランスはつくづくむずかしい。
―シリーズ「
結婚の失敗学~コミュニケーションの失敗」―
<文/亀山早苗>
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