バカリズムが語る結婚後の変化「昔はモテたいとかあったけど」
バカリズムさんと井浦新さんがダブル主演を務める『劇場版 殺意の道程』が2月5日、劇場公開&配信されました。WOWOWオリジナルドラマ「殺意の道程」(全7話)を2時間の劇場版に再編集したもので、バカリズムさんは脚本も手がけています。
本作は完全なる復讐殺人計画を立てる満(バカリズム)と一馬(井浦新)が、まず「どこで打ち合わせをするのか?」「必要な物資は?」など、普通の映画やドラマでは省略されるに違いない“どうでもいい部分”をやたら細かくリアルに描いたサスペンスコメディで、脚本家としても高い評価を得るバカリズム・ワールドが炸裂しています。
第36回向田邦子賞を受賞した連続ドラマ『架空OL日記』など、脚本家としても多彩な才能を発揮するバカリズムさんですが、コントのネタもドラマの脚本も「同じ意識で書いている」と言います。お笑い芸人として、脚本家として多忙な日々を極めるなか、笑いの“絶対王者”がネタを書き続ける理由とは? 本人の口からは意外(?)なモチベーションが明かされました。
――地上波とは異なり、WOWOWはクリエイティヴ上の制約が少ないとよく聞きますが、今回の作品を制作するにあたっていかがでしたか?
バカリズム:まず感じたのは、お金あるなぁってことですかね(笑)。内容的にも、地上波よりも自由度が高いと感じました。地上波では「もうちょっとこうしてもらえませんかね~?」みたいな注文が、普通はあるものなんですよ。視聴者向けにわかりやすくしましょうとか、その時間帯に観ているターゲットに優しい作りというか。そういうことがあまりなく、僕がやりたい笑いをそのままやらせてくれました。
そもそも『殺意の道程』自体、地上波だったら無理だったと思うんです。ドラマ的な展開や次週に向けてのヒキがほしいとかなく、本当にお笑い最優先でやらせてもらえたので、いろいろな面でやりやすかったですね。
――生真面目な一馬役の井浦新さんも面白く輝いていましたが、笑いが本職のバカリズムさんとしては、いかがでしたか?
バカリズム:業種が違うので、嫉妬とかはないですね。本当に純粋に、すごいなって思います。やっぱり俳優さんと芸人の違いっていうのがもともとあると思うんです。
笑いだけに関して言えば、専門である芸人のほうが得意でしょうけれど、フリの部分で関して言うと、やっぱり役者さんならではだなと。自分たちができないような、フリによる笑いがあるじゃないですか。現場でも井浦さんから質問をしてくれたり、逆にドラマという分野でわからないところはこちらが質問したり、そこはきれいに役割が分かれているような感じでした。
――単独ライブのみならず、今回のような脚本・主演など、いろいろな種類の仕事を手がけていると思いますが、それはデビューする前の、なりたかった姿なのでしょうか?
バカリズム:もともとは、お笑い芸人になってコント番組をずっと続けられたらいいなあと思い描いていました。ライブもやりながらテレビで自分のコントをやれることが一番の理想のカタチだったのですが、僕が20代か30代くらいのときに、テレビではコント番組がどんどん終わっていって、なかなか数字が獲れない感じになったんですよね。そのときに、テレビではコントは難しいのかなと。
一方でトークバラエティーとかも好きなので、そういうことをやりつつ、自分の作ったものをライブを中心に吐き出していくことになるのかなと思っていたんです。そしたらあるとき、ドラマのお話をいただいて「あ、この手があったか」みたいな。そこでやりたい笑いを発表できるのではと。そうしたら思いのほか評判もよくて、これは誰もやっていないし、これもありだなと。だからコント番組の感覚で、今でもやっていますね。
――ご自身の中では、コントもドラマの脚本も同じなのですね。
バカリズム:そうですね。ただ、ドラマは“ドラマっていうフリ”が効いているので、より面白い。俳優さん女優さんが出てくれるので、こんな豪華なコント番組はないなって感覚ですね。コント番組よりも豪華な場所でやらせてもらっている感覚です。
――そのご自身の夢が実現している今、仕事の原動力って何でしょうか?
バカリズム:それは「面白かったです」と言われることですね。ライブはその瞬間に笑い声という評価を浴びることができるし、バラエティー番組も出演者、共演者が笑ってくれますが、ドラマや映画は笑い声が聞こえないから、多少不安にはなるんですよ。そうなると、いろいろと現場で言われることの確認しかないんです。原動力は「面白かった」とほめてもらえる、それくらいですかね。前はモテたいとかありましたけど結婚したから、面白かったと言われることが原動力ですね。それはずっと変わらないですね。

WOWOWは「やりたい笑いをそのままできた」
コント番組の感覚でドラマを作る
