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女子高生Adoの「うっせぇわ」大ヒットの影に、ウケ狙いの悲しさ

 現在18歳の女子高生シンガー、Adoが歌うメジャーデビューシングル「うっせぇわ」(作詞・作曲syudou)が話題です。昨年10月23日のリリース以降、MVの再生回数は7400万回を突破し(2/19時点)、テレビの情報番組もこぞって取り上げるようになりました。動画を見た小学生も歌うほどのブームになっているそう。
うっせぇわ

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“社畜あるある”を羅列するベタさで大ヒット

 それもそのはず。曲名の通り、刺激的でキャッチーなフレーズ連発の歌詞に、ハマってしまう人続出なのです。地声と裏声が目まぐるしく入れ替わって、<うっせぇうっせぇうっせぇわ>と歌うインパクトは絶大です。  じゃあ何が“うっせぇ”のかというと、常識や建て前ばかりに心をすり減らす社会のよう。<純情な精神で入社しワーク 社会人じゃ当然のルールです>とか、<クソだりぃな 酒が空いたグラスあれば直ぐ注ぎなさい>、<会計や注文は先陣を切る 不文律最低限のマナーです>と、“社畜あるある”を羅列。  そうした無表情の同調圧力に対して、<あなたが思うより健康です>とか<頭の出来が違うので問題はナシ>と、啖呵を切っていく。言ってしまえば、お決まりのカタルシス的な展開なのですが、ベタほど強いものはありません。

わかりやすさに心血を注いだ一曲

 しかも、全てのフレーズが音楽とマッチしているので、歌詞だけが悪目立ちすることもない。恨みつらみを挙げていく静かなパートと、それをぶった切っていく激しいパートを、サウンドとメロディがきちんと色分けしている。それにしたがって、Adoのボーカルも表情が変わっていくので、聞く人が自然とストーリーを把握できるような構成になっているのですね。  MVで読める詞に加えて、ナレーターのように聞き取りやすいAdoのボーカル。そこに、バンド演奏、歌メロ、アレンジメントが的確に補助線を引いていく。至れり尽くせりで、わかりやすさに心血を注いだ一曲なのだと思います。世間にツバを吐きつけている歌詞なのに、実務的にはかなりの社会適応能力を発揮しているのも、皮肉で面白い。  単なる思いつきの勢いではなく、理路整然と作られているので、ひとつのまとまりとして聴けるのだと思います。ただ面白いことを言ってるだけでヒットするほど、簡単ではありませんよね。

いい音楽というより、“うまい具合にやった”感

 では、「うっせぇわ」がいい曲なのかどうかと言われると、なかなか難しい。確かに、ありがちなテーマに独自性を持たせる言葉のチョイスや、それらを効果的に響かせるサウンドプロダクションなどは秀逸。いいところに目をつけましたね。一本取られた、といった具合です。  しかし、そうしたタイプの、“うまい具合にやった”感というのは、実は音楽の良さにとっては邪魔になってしまいます。
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ウケるための音楽の寂しさ
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