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女子高生Adoの「うっせぇわ」大ヒットの影に、ウケ狙いの悲しさ

比較するのも何だけど…「I Am A God」の場合

 比較対象としては大きすぎるのですが、アメリカのラッパー、カニエ・ウェストに「I Am A God」(2013年)という曲があります。「うっせぇわ」と似たような内容で、“俺は神様なんだからとっととマッサージしに来い”とか、“おい、てめぇ、クロワッサンはどうした”とわめきたてるだけの歌詞なのです。  ところが、カニエはそうしたメッセージに対して、わざわざ注釈をつけるようなサウンドをつけない。ノイズとコラージュを積み上げながら、ただの言いがかりを美しさへと昇華させてしまう。肥大した自我もアートにできると証明した点が、偉大なのですね。

ウケるための音楽をていねいに作る世知辛さ

 そう考えると、かゆいところに手が届きまくる「うっせぇわ」には、どこか哀愁が漂ってきます。下手をすれば10秒も聴いてもらえないサブスク時代で、ウケるための音楽をていねいに作る世知辛さ。感心するほどに、寂しくなってしまいました。  もっとも、こうした筆者の言いがかりも、“うっせぇわ”と言われてしまうのでしょう。しかし、音楽好きな人間なんて、いつの時代もうっせぇ奴ばっかなのです。悪しからず。 <文/音楽批評・石黒隆之> 
石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4
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