比較対象としては大きすぎるのですが、アメリカのラッパー、カニエ・ウェストに「I Am A God」(2013年)という曲があります。「うっせぇわ」と似たような内容で、“俺は神様なんだからとっととマッサージしに来い”とか、“おい、てめぇ、クロワッサンはどうした”とわめきたてるだけの歌詞なのです。
ところが、カニエはそうしたメッセージに対して、わざわざ注釈をつけるようなサウンドをつけない。ノイズとコラージュを積み上げながら、ただの言いがかりを美しさへと昇華させてしまう。肥大した自我もアートにできると証明した点が、偉大なのですね。