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“車いすでJRに乗車拒否された”発言に賛否。車いすユーザーの意見を聞いた

「障害者を取り巻く日本の現状に毒されているのかも」

歩きスマホの急増に不安を覚える車いすユーザーたち 車いす利用者の兄を持つ亜依里さん(仮名・40代)は、今回の件について複雑な思いを聞かせてくれました。 「足に障害がある家族がいるので、一緒に出かけるときは下調べが必須です。車で行くとしたら障害者用駐車場はあるか、タクシーだったらすぐ捕まえられる場所か、ご飯を食べるなら、飲食店にエレベーターはあるか、入り口に近いテーブルにしてもらえるか、段差はないか等々、確認してからでかけます。  でも、私としては自分たちが困らないために調べることなので、それが大変だとは思ったことはそんなにありません。でもそれは頻度が少ないからであって、当事者の兄自身は同じ思いではないかもしれません。  今の日本では万全に下調べしてから行動しないと障害者が普通に動くことは難しいと思います。伊是名さんもご自分や同行者、そしてJRの職員の方みんなが困らないために、もう少し柔軟な対応をされても良かったのかもしれないなとは思いますが、そう思う時点で、障害者を取り巻く日本の現状に毒されているのかもしれないと反省しました。  もちろん、無人駅などのありとあらゆるすべての場所のバリアフリー化は現実的には難しいと思います。ですが、バリアフリーの箇所をわかりやすく掲示するなどの障害者向けの情報の充実や、段差にスロープを設置する、手すりをつける、困っている人がいたら声をかけて手助けする、などの小さなことからもっと障害者が暮らしやすい社会を作ることはできるのではないかと思いました」

「『自費でタクシー乗ってください』も間違ってる」

 盲導犬 白杖 目の不自由な人々 バリアフリー 車いす利用者の他にも、ハンデイキャップを持つ人々の意見も聞いてみました。 「無人駅に行く際に障害者だから事前連絡をしなければならないというのは違うと思います。確かに対応していただく必要があるし、お願いしなければいけないのも事実かもしれませんが、『自費でタクシー乗ってください』も間違ってると思います。電車が止まった時は振替運行するのと同じような考え方もあるのではないかと思いました。  伊是名さんのように発信してくださる方がいることによって、私たちがどこにでもいつでも出かけれるようになっていくのではないかとも感じました」(全盲/女性/20代) 「伊是名夏子さんとご家族の行く手を阻んだのは『障害』です。ただし、これは伊是名さんの体のディスアビリティの話ではありません。 『障害』とは、フィジカルやメンタルの面でハンディを持たない健常者向けに社会がデザインされていることによって生まれるんです」(ロービジョン/男性/40代 ロービジョン=ロービジョン=何らかの原因により視覚に障害を受け、全盲ではないが矯正もできず「見にく い」状態にあること。弱視。)  今回の伊是名さんの発言をきっかけに、暮らしやすい世の中へ変わっていくのか、それとも声をあげる人へのバッシングだけにとどまるのか…社会の一員である私たちの一人ひとりが問われているのではないでしょうか? <文/和久井香菜子>
和久井香菜子
ライター・編集、少女マンガ研究家。『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』(カンゼン)が好評発売中。英語テキストやテニス雑誌、ビジネス本まで幅広いジャンルで書き散らす。視覚障害者によるテープ起こし事業「合同会社ブラインドライターズ」代表
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