
その代わり、毎日、娘と夫とのテレビ電話は欠かさなかった。週末もどんなに忙しくても月に2、3回は帰ってきた。夫と娘がシノブさんの元に来たこともある。
「もともと共同生活をしていく上で協力しあっていたし、夫との仲も悪いわけではありませんでした。でもお互いに、相手を異性として見ることはできなくなっていた。でも単身赴任してわかったんです。うちの夫、わりといい男なんじゃないかと(笑)。
夫にそう言ったら『シノブもいい女だよ』って。離れてすれ違ってみたら、気持ちが戻ったというか。それまではお互いに、いて当たり前の存在だったんでしょうね。マンネリでもあったし」
昨夏、彼女は予定を半年ほど繰り上げて東京へ戻った。これからは当分、家族3人、自宅で暮らせると思うと、新鮮な気持ちになったという。
「今は娘にからかわれるくらい、夫と仲良くしています。離れていた時間があるから、恋人気分が戻ってきたんじゃないかと思うんです。私たちにとっては、結婚11年目でのすれ違いが功を奏したんでしょうね」
マンネリになった夫婦が物理的に離れてみると、自分にとって配偶者とは何だろうと考えるものだとシノブさんは言った。再度、夫を選び直し、よりよい関係を築いていこうという気持ちになれるのかもしれない。
<文/亀山早苗>
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