2000年以降、この外部からの取り入れのスピードが速まり、量が各段にふえたように感じます。こんなものがファッションになるの? というようなものまでが取り上げられ、ファッションとして定着していくものもあれば、脱落していくものもあります。
私がここ最近で最も「こんなものまで取り入れるの?」と感じたのが長靴。しかも日本ではよく魚屋さんがはいているような長靴です。
最初にランウェイにこの長靴が登場したのを目撃したのは2018年春夏のラフ・シモンズのコレクションでした。
イギリスのロックバンドであるジョイ・ディヴィジョンとニュー・オーダーをテーマとしたこのコレクションにおいて、彼らのアルバムジャケットがプリントされたシャツの足元が長靴でした。しかもどう見ても魚屋さんの長靴とほぼ同じ。

ラフ・シモンズの2018年春夏コレクション
(※画像:ブランドの公式ウェブサイトより)
ニュー・オーダーが今でも格好いいのはわかりますが、この長靴はどうなの、と疑問に思っているうちに、2020年プラダの秋冬ウィメンズコレクションにおいてもアップデートされた長靴が登場。ハイブランドのデザイナー達は、これまでファッショナブルとは思われていなかった長靴をファッションとして取り入れ、デザインを昇華し、多くの皆さんにもぜひ取り入れてもらおうと提案しているというわけです。
このようにハイブランドの側からこれまでファッショナブルでなかったアイテムのデザイン昇華が行われると、それに引っ張られる形で実用品としてのアイテムのデザイン性も高まっていくということがよく起こります。ダウンジャケットしかり、トラックジャケットしかりです。
ここ数年、日本では5月から10月の頭ぐらいまで雨が多い日が続きます。以前は少しぐらいの雨なら革靴やスニーカーでそのままお出かけしたものですが、最近の本気の雨の降り具合に、そろそろ普段のお出かけに適した、ちょっとおしゃれな長靴はないものだろうか、と探していたところ見つけたのがこちら。

ムーンスター 810s (エイトテンス)
マルケ ¥6,600
子供の頃にはいていた上履きのメーカー月星が今は名前をかえてムーンスターに。この長靴は810s (エイトテンス)というラインのもの。「プロユースから、デイリーユースへ。」ということで、業務用のアイテムを日常遣いのために、機能面でだけでなくデザイン面を強化。

これは本当の意味での長靴の進化系。はき心地よし、見た目よし、値段よしと、三拍子そろった、私たちの日常にぴったり寄り添う理想が具現化されたもの。

一生のうちのほとんどの時間を占める平凡な毎日のためにはこれぐらいのデザインがちょうどよい。今から雨の日が待ち遠しいです。
<文/小林直子>
⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】