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「ママ友は友達じゃない」と思う母親が多いわけ。息苦しい関係はもうイヤ

息苦しかった90年代の「ママ友“村”」

 ここまで「ママ友」と「友達」の違いについて考察してきましたが、「『ママ友社会』は現代の“村”である」というのが、筆者の持論です。とはいえ、この「村」は、少しずつ過疎化が進んでいるようです。  近代の「ママ友史」をざっと見渡してみましょう。Googleトレンドを見ると「ママ友」という言葉が広く使われるようになったのは2010年代になってから。
「ママ友」

検索サイトGoogleにおける「ママ友」検索数の推移(画像はGoogleトレンドの値をダウンロード、グラフ化したもの)

 とはいえ「ママ友」という関係性自体はもちろん決して新しいものではなく、2000年以前にも母親同士の濃密な関係は存在していました。  日本が右肩上がりに経済成長していた時代に、夫が外に勤めに出て専業主婦の妻が主に子育てを担うようになると「地域で子どもを育てる」「大家族で育てる」地域・家族は少なくなり、その代わりに母親同士の濃密なコミュニティが形作られていきます。  1990年代には「公園デビュー」などの言葉が使われ、母親社会に溶け込むためのファッションやコミュニケーションスキルが育児雑誌で特集された一方で、狭い母親社会の人間関係に苦しむ女性の声を集めた書籍も出版されています。 公園デビュー ベビーカー「村社会」「大家族」「同居の姑」など、昔ながらの濃密な人間関係から距離を置いた先には、「ママ友」という別の“村社会”が待っていたのです。比べられたり、噂の的になったり、親・子ともに“平均的であること”を求められたり……そんな村の生活から距離を置きたい母親が増えてきた。それが現在の、ある種ドライな「ママ友関係」に繋がっているのだと思います。

近づきすぎたママ同士が、適度な距離を置き始めた

 子育てに人と人とのつながりが必要であることの表れとも言えますが、今の「ママ友」という言葉へのネガティブなイメージは、過去30~40年で母親同士が近づきすぎたことの「反動」なのかもしれません。  また、共働き化が進んで「職場」という居場所を持つ女性が増え、夫の育児参加率が多少なりとも上がったことも、ママ友同士が適度な距離を置くようになった要因の1つだと考えられます。 赤ちゃんを抱っこする父親 ゆるく社交はしたい。でも仕事も育児も忙しいからべったり付き合うのは避けたい。トラブルメーカーと関係を持つくらいならママ友を作らない方がいい。母親同士が「メリット」「デメリット」を抜きにした関係を結びにくいことを悟り、顔見知りの母親との「ちょうどよい関係」を探り合っている。そんな子育て中の女性が、少なくないのかもしれません。 *出典:株式会社コズレ「ママ友・パパ友に関する調査」 調査主体 :株式会社コズレ 子育てマーケティング研究所 調査方法 :インターネットリサーチ 調査対象 :妊娠中または子どもがいるママパパ 調査期間 :2020年2月3日~2020年3月3日 有効回答者数 :2413名 <文/北川和子>
北川和子
ライター/コラムニスト。商社の営業職、専業主婦を経てライターに。男女の働き方、家族問題、地域社会などをテーマに執筆活動を行う。
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