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松重豊の出演ドラマに“ハズレなし!”の理由。コワモテからにじむ愛らしさ

『孤独のグルメ』『猫村さん』原作とは違う魅力を発揮

 大ヒットした『孤独のグルメ』、私は原作ファンなんですが、正直言って原作漫画の井之頭五郎とはだいぶ印象が異なります。
久住 昌之 著, 谷口 ジロー 作画「孤独のグルメ【新装版】」 (SPA!コミックス) 扶桑社

久住 昌之 著, 谷口 ジロー 作画「孤独のグルメ【新装版】」 (SPA!コミックス) 扶桑社

 原作のほうは、若干スノッブでカッコよすぎるところがあるんですが、松重版は眉間にしわを寄せ、コワイ顔で真剣に食べ物に向き合い、そこから相好(そうごう)を崩して本当に美味しそうに食べる姿がなにしろ魅力的で、幸せそうで、一番の魅力になっています。  さらに『きょうの猫村さん』!! こちらも原作ファンですが、まっったく想像もしませんでした。  あのバカでかい体でゴロゴロしたり、たまらずじゃれたりしてしまう姿の愛らしさとおかしさは、ちょっとした発明ですね。
(※画像「【ミニドラマ】きょうの猫村さん」テレビ東京公式サイトより)

(※画像:「【ミニドラマ】きょうの猫村さん」テレビ東京公式サイトより)

遅咲きだからこその説得力

 松重さんの芝居の魅力には、想像力の豊かさや興味・関心の広さと深さ、経験に基づく奥行きがある気がします。  なにしろ、もともとはミュージシャン志望で、挫折して大学で演劇を専攻し、最初は演劇や映画制作する側の勉強をしていました。もともと作り手志望だったところから役者になったのは、同じ事務所・ザズウの眞島秀和さんも同じ。  蜷川スタジオに入りますが、退団した後はフリーになり、舞台やテレビドラマ、映画、Vシネマなどに出演したものの、生活が困窮し、一度は休業。そんなとき、今の事務所の社長に促されて役者に復帰したという経歴は有名です。
松重豊「空洞のなかみ」毎日新聞出版

松重豊「空洞のなかみ」毎日新聞出版

 そうした苦労から座右の銘は「その日ぐらし」で、初心を忘れないようにしているそう。釣りや写真、園芸、家電、散歩など、多趣味でも知られており、エッセイや小説も執筆する文才の持ち主でもあります。  遅咲きだからこそ、これまでの様々な経験や知見が芝居に生かされ、彼が出ているだけで「ハズレなし」と思わせる説得力があるのではないでしょうか。 <文/田幸和歌子> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
田幸和歌子
ライター。特にドラマに詳しく、著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』など。Twitter:@takowakatendon
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