新型コロナウイルスのワクチンの普及が進む中、アレルギーや基礎疾患を持つ方からは「接種でアレルギー反応やアナフィラキシーを起こすのではないか」と不安の声もあがっています。 　そのような方々のワクチン接種時の疑問や不安を、医師たちによるプロジェクト「こびナビ」で解説・解決してもらいましょう。「こびナビ」では、新型コロナウイルスやワクチンの正確な情報を、文章や動画で発信しています。 聞き手：成田 沙季（MESプロモーション株式会社広報担当） 解説：岡田 玲緒奈先生（こびナビ 幹事、千葉大学医学部附属病院 次世代医療構想センター 特任教授、日本小児科学会 小児科専門医） 成田沙季さん（以下、成田）「まず、『アナフィラキシー』とは何でしょうか？」 岡田玲緒奈先生（以下、岡田）「簡単に言いますと『2つ以上の重いアレルギー症状が同時に現れること』を『アナフィラキシー』と呼んでいます。 　よく間違えられがちですが、『アナフィラキシーショック』と『アナフィラキシー』は別物です。アナフィラキシーに伴い、血圧低下（医学用語で「ショック」）や意識状態の悪化といった最重症な症状を引き起こした状態を『アナフィラキシーショック』と呼んでいます。 　米国の大規模なデータでは、アナフィラキシーを引き起こす人の割合は100万人に5人程度と言われています。これらのアナフィラキシー患者全員が、最重症なアナフィラキシーショック患者ではないということに注意が必要です」 成田「花粉症や食物アレルギーのある人はアナフィラキシーを起こしやすいのでしょうか？」 岡田「mRNAワクチンの接種でアナフィラキシーを起こした人の中にはアレルギー体質の人が多いということがわかっていますが、捉え方には注意が必要です。アレルギー体質の人全体の数はとても多く、そこから考えるとワクチン接種でアナフィラキシーを起こした人は稀と言えます。『アレルギーがあるからワクチン接種ができない』と短絡的に考えることは避けていただきたいです。 　一方で、ワクチンの成分の一つでアレルギーを引き起こす原因と言われるポリエチレングリコール（PEG）でアナフィラキシーを起こしたことがある人は、ワクチン接種は推奨されていません。しかしPEGは化粧品や便秘薬、内視鏡検査で用いる下剤、注射薬をはじめ日常的に使用する様々なものに含まれており、これに対するアレルギーはとても稀です。事前にご自身にPEGのアレルギーがあるかどうか、過度に心配する必要はないでしょう」 成田「コロナワクチン接種前に問診などはあるのでしょうか？」 岡田「他のワクチンと同様、ワクチン接種前に問診票を書きます。アレルギー歴などを記載する欄もあります」