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「逃げ恥」や「アンナチュラル」の脚本の魅力とは?/『脚本家・野木亜紀子の時代』

 優れたドラマには優れたシナリオライターあり。実力を多くの人に認められ、「この人の書くドラマなら見たい」と思うファン層が形成されている人気脚本家と言えば、春ドラマの『大豆田とわ子と三人の元夫』が好評だった坂元裕二さん、ヒット作『コンフィデンスマンJP』の映画展開が続く古沢良太さん、新作の『俺の家の話』が高く評価された宮藤官九郎さんの名前が挙げられるでしょう。
死を見つめることで、生を描く

(画像:『MIU404』公式サイトより)

 そして、2020年の作品『MIU404』が第108回ザテレビジョン・ドラマアカデミー賞脚本賞や第37回ATP賞ドラマ部門最優秀賞に選ばれた野木亜紀子さんも。  野木さんは、今年放送された『逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類!新春スペシャル!!』が視聴率15%を超えるなど、上記の脚本家の中でも執筆作の視聴率が最も高く、Twitterのフォロワーは約22万人。ひとつ頭抜けた人気ぶりはデータでも裏付けられています。

『逃げ恥』や『アンナチュラル』『重版出来』など名作揃い

 そんな野木さんの作品についての評論集「野木亜紀子の時代」(blueprint発行)が7月に発売されました。この本では私を含め7名のライターが野木さんの代表作について深堀りし詳しく分析しています。  2016年の『重版出来!』に始まり、新垣結衣さんと星野源さんが共演したヒット作『逃げるは恥だが役に立つ』、法医学ミステリーの傑作『アンナチュラル』、向田邦子賞受賞作『獣になれない私たち』、社会派の単発ドラマ『フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話』、異色の人間ドラマ『コタキ兄弟と四苦八苦』、熱狂を呼んだ刑事ドラマ『MIU404』まで。
『脚本家・野木亜紀子の時代』(blueprint)

『脚本家・野木亜紀子の時代』(blueprint)

 もちろん、私も全作品を見てきたわけですが、それぞれの評を読むと、自分では気づいていなかったポイント、または言語化しインプットしていなかったことがたくさんありました。

ドラマに似た状況が現実で起きることも

 例えば、執筆陣の中で佐藤結衣さんは『逃げ恥』について「多くの『普通じゃない』と言われそうな人たちが、幸せになっていく過程が描かれる」と書いています。  同作には恋愛経験の少ない人、未婚の人、セクシャルマイノリティの人が登場し、多様性(ダイバーシティ)は野木作品の大きなテーマになりました。
「逃げ恥」

(画像:『逃げるは恥だが役に立つ』公式サイトより)

 また、成馬零一さんは『フェイクニュース~』で描かれたインフォデミック(ネットでデマが拡散し人々の行動に影響を及ぼすこと)も野木作品のテーマのひとつであり、その恐ろしさは放送時よりも2021年の今、見返すと、リアルに迫ってくると指摘。  野木さんが描いたドラマに似た状況が現実で起きることは少なくなく、私も『アンナチュラル』の章でその予言的要素についての考察をしました。
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『MIU404』での綾野剛・星野源の役は似た者同士
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