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宇垣美里「朝まで踊り狂おう。ムーミン作者の燃えるような人生」/映画『TOVE/トーベ』

 元TBSアナウンサーの宇垣美里さん。大のアニメ好きで知られていますが、映画愛が深い一面も。 「ティファニーで朝食を」ルックの宇垣美里さん そんな宇垣さんが映画『TOVE/トーベ』についての思いを綴ります。 TOVE トーベ●作品あらすじ:「ムーミン」の原作者として知られる、フィンランドの作家トーベ・ヤンソンの若き日々を描きます。  第二次世界大戦下のヘルシンキ。激しい戦火の中、画家トーベ・ヤンソンは、不思議な「ムーミントロール」の物語を描き始めました。やがて戦争が終わると、彼女は本業である絵画制作に打ち込んでいきますが、著名な彫刻家でもある厳格な父とぶつかり、保守的な美術界との葛藤の中で満たされず、若い芸術家たちとの目まぐるしいパーティーの日々、いろいろな恋愛を経験していきます。  そんな中、彼女は舞台演出家の既婚女性と出会い激しい恋に落ちます。それはムーミンの物語、そしてトーベ自身の運命の歯車が大きく動き始めた瞬間でした。  トーベの人生のあり方とともに、その創作の秘密にせまる本作を宇垣さんはどのように見たのでしょうか?(以下、宇垣さんの寄稿)

タバコとお酒とダンス。自由を求め、愛に翻弄されるトーベ・ヤンソンの半生

映画『TOVE/トーベ』

『TOVE/トーベ』より

 学生の頃、青い鳥文庫のムーミンシリーズにハマって以来、その世界観が大好きだ。どうしても原画が見たくて作者トーベ・ヤンソンの故郷フィンランドへ旅したこともある。そこまで好きなのにもかかわらず、作者については児童用伝記本の内容くらいしか知らなかった。  厳格な父との軋轢(あつれき)や芸術家としての苦悩と生活苦、狂おしいほどの愛と別れ……濃厚な人生を送った彼女の若き日に焦点を当てた本作を見て、私は今までムーミンの何を見ていたのだろう、としばし呆然(ぼうぜん)としてしまった。

まっすぐに芽生えた愛を突き通す強い生き様

『TOVE/トーベ』より

『TOVE/トーベ』より

 展示会でムーミンをさらさらと描くトーベの映像を見た時、ずっとその左手にタバコがあったことがなんだか意外で印象に残っていたのだが、劇中でも彼女は常に紫煙をくゆらせワイルドに酒をかっくらう。戦後のさまざまな困難の中、同性愛が罪であり今よりもずっと保守的な時代にもかかわらず、相手が既婚者だろうが同性だろうが、まっすぐに芽生えた愛を突き通す強い生き様がかっこいい。  特にスナフキンのモデルでもあるアトス・ヴィルタネンとの関係は今の時代から見ても先進的で、おしゃれな会話で秘密を共有し合い、お互いに大切に思い尊重し合う様子に憧れを持った。スナフキンとムーミンの関係に友情以上のものを感じドキドキしていた自分の読みも、あながち外れていなかったのかもしれない。

踊るように、燃えるように生きるトーベはあまりに魅力的

映画『TOVE/トーベ』

『TOVE/トーベ』より

 悩んだり苦しんだり、愛に翻弄され時に傷だらけになりながらも、それらの経験をすべて創作として昇華するトーベ。そりゃあ、ムーミンたちがみんなに愛されるはずだ。だってムーミンの世界は彼女の人生そのものなのだから。トーベはムーミンの風変わりながら穏やかで平和な世界観からは想像もできない、型破りに情熱的で自由を渇望し続け、仕事と愛に生きたアーティストだった。  さあ部屋を暗くして、『Sing,Sing,Sing』を爆音でかけて朝まで踊り狂おう。ままならなさを吹き飛ばすように。迷いを断ち切るように。踊るように、燃えるように生きるトーベはあまりに魅力的で、その眩(まばゆ)さにくらくらしてしまった。 TOVE/トーベ』 監督:ザイダ・バリルート 出演:アルマ・ポウスティ、クリスタ・コソネンほか 配給:クロックワークス ©2020 Helsinki-filmi,all rights reserved 【他の記事を読む】⇒シリーズ「宇垣美里の沼落ちシネマ」の一覧はこちらへどうぞ <文/宇垣美里> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
宇垣美里
’91年、兵庫県生まれ。同志社大学を卒業後、’14年にTBSに入社しアナウンサーとして活躍。’19年3月に退社した後はオスカープロモーションに所属し、テレビやCM出演のほか、執筆業も行うなど幅広く活躍している。
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