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子なし専業主婦のセックスレス地獄。泣き疲れた35歳はどこへ向かう?|松本まりか『それ誓』

弾けるような笑顔を、夫には向けない

 それにしても、男女の気持ちは複雑なようで単純なのかもしれない。純はそんな笑顔を、もはや夫には向けない。夫に思わせぶりな体言止めで話したりもしない。夫にセックスを拒否され続けてきた恨み辛みが積もりに積もっているからだ。夫との現実的な生活は、「容赦がない」と彼女は言う。夫といると、世の中の不幸を一心に背負っているような表情になってしまうのだ。  一方で、真山に対しては余裕がある。相手が自分に好意をもっていること、自身が既婚であることから、同僚への友情以上恋愛未満の気持ちを楽しもうとさえしているのだ。

9センチヒールは誰のため?

 しかし、第3話の最後で、純と真山の間にすれ違いが起こる。クロスワードのリベンジのため夜8時に待ち合わせをしていたのだが、純は残業を頼まれ、真山は意に反した飲み会にかり出される。 「飲み会、楽しんで」とメッセージを送ってくる純に、真山は「絶対に行くから」と返信する。そして真山は待ち合わせ場所へと急ぐ。だが純はいない。帰りを急いでいた彼女だが、ふと自分がその朝、久しぶりに選んだ9センチヒールを見つめる。男の目を意識したヒールに背中を押されるように彼女もまた、待ち合わせ場所へと走った。  夜の海が見える公園で、「やっと」会えたふたり。このシチュエーションは恋愛の始まりであろう。  純から“余裕”が消えた瞬間だ。  お楽しみは次週へということになったが、それにしても9センチヒールは好きな男に会いに行くときのアイテム……というのには目が点になった。今でも女性たちはそういう価値観に共感するのだろうか。ファッションもメイクも自分のために、自分が好きだからそうするのが当然だと思っていたから、この感覚はさすがに古いと思わざるを得なかった。もちろん、そういう価値観の女性だからこそ、思わせぶりな言葉と体言止めを連発するのかもしれないが……。  このあと、純はどういう選択をするのか、そして彼女がひとりの人間として夫との関係や真山との関係をどう修正していくのかに興味は尽きない。 <文/亀山早苗> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
亀山早苗
フリーライター。著書に『くまモン力ー人を惹きつける愛と魅力の秘密』がある。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio
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