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<前編>23歳で他界した京大院生が明かした「最初に死にたいと思ったときのこと」|山口雄也×yuzuka

山口さんとの最後の会話

 だけどその日、山口さんの体調が良くないというツイートを見ていた私は、時計の針が進むたびに強い罪悪感を覚えていた。このまま話し続けて、彼の体調が本格的に崩れてしまうことを考えると、気が気ではない。  だから朝の4時、まだ話そうと言葉を続ける山口さんに、私が無理やり提案したのだ。 「やっぱり、もう少し体調が落ち着いてからにしましょう。寝ていただかないと、私が心配です」  強く言う私に観念したように、山口さんはやっと同意して、そしてはっとした顔をしてから、「それなら、僕の本を送ります。次に話すときまでに、読んでください」と言って笑った。 「宿題ですね」と笑う私に、微笑みかえす山口さん。なんだか安心した。また話せるのだ、次回は何を話そう。次はもっと、早い時間から話そう。そんなことを考えながら、Zoomの全員退室ボタンを押す。  それが、私と彼の最後の会話だった。
zoomで対談する筆者と山口さん

zoomで対談する筆者と山口さん

最期まで文章を発信し続けた山口さん

山口雄也さん 山口雄也さん。彼は23歳で、旅行が好き。阪神タイガースの大ファンだった。応援するときはついつい口が悪くなるけれど、実際の彼は自転車で万引き犯を捕まえるような勇敢な人だ。  何よりも、文章を書く能力に長けていた。嫉妬したくなるほど、彼の書く言葉は美しかった。  私が彼を語るとき、まず最初に伝えたいのはその部分だ。彼はとても繊細な、だけど優しくて正義感の強い、才能に溢れた大学生だった。  山口さんが亡くなったのは、約5か月前の6月6日。23歳だった。最終的に彼の死因になったのは、急性骨髄性白血病だ。19歳、大学1年生の頃、縦隔原発胚細胞腫瘍という希少がんが見つかった。医師からは、「5年生存率40~50%」だと伝えられたという。 「自分の人生の延長線上に『死』が存在するということを強く認識して、単純に怯えました」  画面越しにそう言う彼は、落ち着いた雰囲気で微笑んでいる。 「昔は漠然と、70か80までは生きるかなって思ってたんです。それが突然、30まで生きられないかもしれない、と言われた。悲しいとか以前に、自分がどう感じているのかもよく分からなくなった覚えがあります」  そのとき初めてがんと宣告を受けてから、彼は闘病の様子をブログやSNSで発信し続け、その投稿は、彼が亡くなる6日前まで続いた。
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インタビューから数週間後…
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