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<前編>23歳で他界した京大院生が明かした「最初に死にたいと思ったときのこと」|山口雄也×yuzuka

「急に頑張れなくなった」すがる思いで精神科を訪れた日

山口雄也さん 山口さんはこの頃、大学の単位を大量に落としている。 「退院したら、急に頑張れなくなったんです」  そして2018年の夏のある日、大学の講義中に、突然体が動かなくなるような脱力感に襲われた。 「これはもうだめだ、と思いました。その日は雨が降っていたんですけど、荷物を全部ほっぽり出して外に出ました。スマホで検索して、地元で有名な精神科に泣きながら電話をかけたんです」  連絡をした精神科のスタッフは山口さんの話を親身に聞き、状況を深刻に受け止めたのか「今日か明日には受診してください」と声をかけたそうだ。  山口さんは雨の中その足で、藁にもすがる思いで病院に出向いた。しかし、そこで受けた対応は、山口さんをさらに孤独に追い込むものだった。 「病院に到着して、長々と問診を受けました。そのとき、渡された用紙の既往歴の欄に『がん』と書いたんです。そのあとちょっと空気が変わった感じがして……。全然人もいないのに1時間以上待たされました。ようやく名前を呼ばれて診察室に入った後、しばらくカウンセリングのようなことをされたのですが、最終的に『間違いなく精神疾患を患っている状態だけど、薬は出せない』と伝えられたんです」

定期検診で発覚した白血病

 他院で悪性腫瘍の治療を受けている山口さんに対して、 「禁忌の薬もあるし、ここでは対応ができない。相手は大学病院だし、勝手に処方すると問題になる」と、医師は言った。 「今考えれば普通の判断なんですけど、勇気を出していったのに裏切られた、最後の頼みでいったのに、診察代だけ取られた、みたいな絶望感に陥って……。  一応、微量の睡眠薬は処方されましたが、飲まずにゴミ箱に捨てました。そこから1か月くらいかけて体がさらに動かなくなって行き、自分は間違いなくうつ病だと思っていました。  だけど、京大の定期検診に行ったとき、そこで『白血病だ』と診断されたんです。驚きました。『だから体がだるかったのか』と思うと同時に、多分あの大きなストレスが白血病を引き起こしたんだと感じたことも覚えています。今となってはあのとき、僕の体に何が起こっていたかなんてわからないですけどね」  2018年6月、悪性腫瘍の治療がようやく終わったと思ったタイミングで発覚した、白血病。息を飲み、答える言葉を選ぼうとする私に、山口さんは続けた。 「でも多分、あのとき白血病になっていなかったら、僕はもう死んでいたんです」
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「みんな、死ぬときだけ寄ってくるんやな」
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