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その強みは『ドライブ・マイ・カー』でも生かされ、スマッシュヒットとなったのは周知の事実だろう。本作はそれ以上に独自性と娯楽性の抜群なバランスが取れていることに驚かされるはずだ。「短編で好きなことにチャレンジをするのはとてもいい方法だった」と振り返る。
「この作品を撮ってみて、改めて短編、中編でやりたいことを試すのはいいと思いました。試行錯誤できて、小さいチームであれば小回りも利く。コロナ禍のような撮影には難しい環境にも対応できる。これまでは短編だと公開する場が少なく、関わってくれたキャストやスタッフに申し訳なかった。その出口の問題が、テーマを決め、短編集とすることで解消できた。今回それがわかったのは、すごく大きなブレイクスルーでしたね」
実は本作は未完成。7編でコンプリートする予定で、監督は「長編の製作の合間を使って40代のうちに仕上がればいいかな、と思ってます」と。気長に待ちたいものだが、本作を観れば「いや、1編ずつでもいいから、早く続きが観たい」となるだろう。
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偶然と想像
監督・脚本/濱口竜介 出演/古川琴音、中島歩、玄理、渋川清彦、森郁月 甲斐翔真、占部房子、河井青葉 撮影/飯岡幸子 プロデューサー/高田聡 配給/Incline 12月17日(金)Bunkamura ル・シネマほか全国公開
【濱口竜介】
’78年、神奈川県生まれ。商業デビュー作は『寝ても覚めても』(’18)、商業長編2作目の『ドライブ・マイ・カー』(’21)は、カンヌ国際映画祭脚本賞を受賞。短編集『偶然と想像』(’21)ではベルリン国際映画祭で銀熊賞受賞
取材・文/よしひろまさみち 取材/村田孔明(本誌) 撮影/山野一真