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「身近な恋愛が軸になった物語です」映画『偶然と想像』を濱口竜介監督が語る

 今年度の米国アカデミー賞国際長編映画賞日本代表として選ばれた『ドライブ・マイ・カー』。アメリカで公開されるやいなや、各メディアから絶賛され、本選候補への期待が高まっている。

世界は偶然でできている。一方で偶然が起きなかった世界も必ず想像してしまう

偶然と想像

濱口竜介監督

 そんななか、濱口竜介監督の最新作『偶然と想像』が公開。今年のベルリン国際映画祭で審査員賞にあたる銀熊賞を獲得した3つの中編によるオムニバス作品だ。  ちょっとした偶然によって引き出される人の“もう一つの顔”を描いた本作、監督はどこから着想を得たのだろうか。 「今ある世界は偶然によって起こったものだけれど、人は偶然が起こらなかった世界も必ず想像してしまうもの。これは九鬼周造の哲学書『偶然性の問題』を読んで気づかされたことです。偶然は発生する可能性が低くても確実に起きたこと、一方で想像は存在しないものにする。  大げさかもしれないけど、この2つを合わせると世界そのものを表現できるように感じられたんです。そして、人の二面性や多面性を描くのにも通じるのかな、と。あるときポンと偶然が現れて、それを受け入れると日常とはちょっと違う世界にヒュッといくわけですよね。そのとき、日常では見られない別の顔が現れる」

どれも身近な恋愛が軸になった物語

 難しい。だが、3つの物語はとてもわかりやすく、心をざわつかせる。「魔法(よりもっと不確か)」と題された1編は親友が出会った男性が元カレだったことで、心かき乱される若い女性の話。「扉は開けたままで」は落第させられた学生が、恋人を使って教授にハニートラップを仕掛けようとする話。「もう一度」は20年ぶりに再会した2人の女性の会話劇。  どれも身近な恋愛が軸になっており、新たな表現方法を模索し、世界的な映画賞を次々と受賞している気鋭の監督のイメージに合わないかもしれない。悪く言えば下世話な話と捉えられてしまうからだ。 「いや、もともと僕は下世話な人間なんですよ(笑)。『寝ても覚めても』もそうでしたが、恋愛がきっかけの話は、観客にも受け入れやすいと思います。皆が興味を持ち、想像しやすいものをきっかけに映画を作っていけるのは、僕自身の強みだと思ってます」
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実は本作は未完成
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