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NHKテロップねつ造問題で河瀬監督の責任を問う声も。問題の核心とは

河瀬監督の責任を問う声が多いが…

報道やインターネット上での議論を見ると、この騒動に対する問題の切り取り方は、NHKによるテロップの捏造およびそれがもたらす印象操作の可能性の他、河瀨氏の責任を問う声や同氏の政治的指向にまで言及する声が多い。
(画像:河瀬直美氏公式サイトより)

(画像:河瀬直美氏公式サイトより)

両者ともいわゆる「政治と報道」という大きなテーマに紐(ひも)づけたものであり、それはそれで意味があるのかもしれない。しかし、どちらかと言えば、この問題を論ずる人の関心事に寄せた議論であり、いささか過剰反応の嫌いは否めない。 特に「河瀨氏は名前を出しているのだから知らないではすまされない」という声に関しては、自身もクリエイターである以上、被写体として取材を受けることを許可した後は、内容については番組制作者に任せるというスタンスを取るのが通常であろう。 多くの利害関係人が存在する五輪の公式映画制作者としてはそのような態度を取ることは甘いのかもしれない。しかし、映像制作者の作法として極力検閲的なことはしないというスタンスを取れば、河瀨氏の行動は自然なものであろう。

チェック体制の強化だけでは同様トラブルも

14日、放送倫理・番組向上機構(BPO)は放送倫理違反の審議対象にするかの討議を開始すると発表した。もちろん、公の機関で事実の確認をし、再発防止策を検討することは大切な作業である。 しかし、討議の結果としてチェック体制を強化しても「記者として疑問を持って掘り下げる」という基本的なスタンスがなければ似たようなトラブルは発生し続けるだろうし、何より番組の質の向上は望めない。 NHK 放送局 公共放送

この騒動から学べることは?

この番組の目的はあくまで「五輪公式映画の制作スタッフの葛藤を描く」ことにあるとすれば、「金銭授受を受けて五輪デモに参加したという男性」は制作者にとっては、ほんの番組構成要素、つまり素材の1つでしかなかったのかもしれない。 しかし、その素材はフィクションでない以上、実在する社会と連動するものであり、このテロップが流れたことで五輪デモに参加した人たちに対するイメージが低下したことは否めず、また参加者の中の人たちの中に心を痛めた人も少なからずいたことだろう。 この問題を機に「他人のふんどし」で相撲を取るマスコミ業界の仕事の危険性を筆者自身も含めて自覚すると共に、トラブルの再発防止と今後の番組の質の向上が図られることを期待したい。 【熊野雅恵】 ライター、合同会社インディペンデントフィルム代表社員。阪南大学経済学部非常勤講師、行政書士。早稲田大学法学部卒業。行政書士としてクリエイターや起業家のサポートをする傍ら、映画、電子書籍製作にも関わる。 <文/熊野雅恵>
熊野雅恵
ライター、合同会社インディペンデントフィルム代表社員。阪南大学経済学部非常勤講師、行政書士。早稲田大学法学部卒業。行政書士としてクリエイターや起業家のサポートをする傍ら、映画、電子書籍製作にも従事。
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