「もちろんあの当時は許せなかったと思ったし、あの判断は間違っていたわけじゃない。でも最近、娘が『うちにはパパいないの?』と言い出して。夫には会わせないようにしていたんですが、あちらも養育費を払っているんだから会わせてほしいと再三言ってきている。
面会については当時、夫側から何も言わなかったんです。その後、会いたいというのを私が却下していた。でもやっぱり会わせたほうがいいのかもと思い、昨年暮れ、初めて会わせたんです。夫は娘を抱き上げて泣いていました。浮気当時も号泣していたなあと思い出しながら見ていました。
その後、夫と3人で食事に行ったんです。夫は娘がかわいくてたまらないという様子でした」
帰り際、夫は「オレたち、離婚を早まった。そう思わない?」と言った。それを聞いたミホさんは、また自分の心が固くなっていくのを感じたという。
「思わない、と吐き捨てるように言いました。相変わらずあなたは私の傷を見てくれないねって。夫はまた涙目になっている。泣けばすむってもんじゃないのよと大声を出してしまいました。
私が夫に怒りをぶつけたのは初めてだったと思う。
そうだ、私は怒っていたんだ、この5年間ずっと。自分でもやっと気づいた感情でした」
夫もようやく元妻の怒りが少しは身にしみたようだった。
「元の鞘(さや)に収まるのかどうかはわかりません。お互い、素直に話し合えるときがくるかどうか。それより私としてはまず、娘の心を大事にしなければと思っています」
ただ、とミホさんはようやく笑顔を見せながらこう言った。
「自分がずっと怒っていたことに気づけたのはよかった。気持ちを解放できたせいか、夫に対してくすぶっていた怒りのドロドロが少しは減ったような気がします」
言いたいことを言い合わずに別れたから、5年という長い間、彼女の心は蓋(ふた)をされたようになっていたのだろう。この先、元夫婦の関係がどうなるかはわからないが、感情を解き放った今、ミホさんの生き方は変わっていくはずだ。
―シリーズ「不倫、その後」―
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<文/亀山早苗>
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