ブームの終焉か……。
1本1000円超の高級食パンに未来はあるのか?
1本1000円以上する食パン、度肝を抜かれる奇想天外な店名・店構え、かわいいねこ型食パン……。そんな“高級食パン”や“ユニークパン屋”のブームにかげりが見えてきているというニュースを耳にするようになりました。
これは少なからず事実のようで、某カリスマプロデューサーが手掛けた個性的なパン屋はじわじわ閉店、モスバーガーが渾身の一手としてはじめた持ち帰り専用食パンも約半年で終わりを迎えてしまいました。
高級食パンブームは本当に終わってしまうのでしょうか。そこでもう少し視野を広げて、“新業態ベーカリー”を見ていくと、しっかり根づいて愛されているお店もあり、その明暗には“決定的な戦略の違い”があることに気がつきました。
そこで今回は、失敗してしまう高級食パンの原因を探りながら、継続的に多くの人々に選ばれる“成功パン”の秘訣を探してみることにしました。
はじめに、シンプルで上質そうな「高級食パン」を看板商品とするお店が、なぜ“負の要素”をはらんでいるのかについて考えてみたところ、3つの理由が浮かび上がってきました。
①毎日そんなに食べ続けられない
※イメージです(以下、同じ)
そもそも食パンを食べる場合、1人が食べる適量は1~2枚。値段はさておき、好き好んで食パンばかり食べている人は、それほど多くはないでしょう。
また、ブームになった“生食パン”の賞味期限の短さ(1~2日、あとは冷凍するしかない)を考えれば、理想の状態で全部食べ切ることを保証してくれていないことに気がつきます。
②コンビニやスーパーの食パンが、ちゃんとおいしい
本当に高価格に相応する価値があるか? という点でも疑問が生まれます。
「ストレート法」という短時間発酵で作られることが多い高級食パンは、その日に食べる“生食感”を魅力にしていますが、翌日以降、味が落ちやすく、普段スーパーやコンビニ等で気軽に購入できる「中種法(発酵時間が長く、時間が経っても劣化しにくい)」よりも簡易な手法と解釈できなくはありません。
③贈り物やビジネス用途で選ばれにくい
自分で購入することを考えた場合、食パンは“朝ごはん”のイメージが強く、極上感よりも手頃さが喜ばれるでしょう。また、人に渡すプレゼント需要を考えた場合、菓子のようにビジネス用途や贈り物としてのパワーが若干弱いのかも。嗜好品というよりは定番・王道さが強みになりやすいとも言えます。
つまり、“生食パン”という当初新ジャンルのように感じられた発想は、継続的なファンを作り上げるには、コンテンツとして十分かつ継続的な実力を持っていないことが明らかになりつつあります。それではもう一方、あの“ユニークなパン屋”は一発屋で終わってしまうのでしょうか?