自分の友だちと関係をもったであろう夫を、アイさんは当然、許すことができなかった。離婚の二文字が頭の中をぐるぐるする。だが当時、娘は3歳。パパが大好きな娘のことを第一に考えた。夫とは独身時代も含めると10年つきあってきた。
「酔って歩けなくなったマミさんがラブホテルの前で動かなかったので、とりあえず介抱するつもりでホテルに入った。彼女を寝かしつけて自分は帰るつもりだったが、急に抱きつかれて帰れなくなった。でも最後まではしていない。それ以来、マミさんに呼び出されて離婚の相談に乗っていた」
そんな夫の言い訳を信じたわけではない。だが、夫がマミさんともう会わないだろうということはわかっていた。
「夫は少し変わりました。娘のことは以前から本当にかわいがっていましたが、それ以来、渋々(しぶしぶ)やっていた家事も率先してやるようになったし、変わろうとしていることだけは伝わってきた」
マミさんとは何もしていないと言い張るのも、夫の優しさなのかもしれないとアイさんは感じた。

あるとき、アイさんは夫に「私に対して卑屈にはならないで。新たに夫婦としてがんばっていこう」と告げた。夫はうっすら涙さえ浮かべ、彼女の手をとった。
「それから1年くらい、がんばったんですよ、夫も私も。夫がマミと寝たはずだと思うととても夜の生活に耐えられない。だけど私から誘いました。仲良し3人家族を再構築するためにはしかたがなかった」
だが翌朝、アイさんの下半身にはじんましんが広がっていた。あわてて皮膚科に行くと、「急激なストレスがあったんじゃないですか」と言われたそう。自分で自分を偽っても体は正直なのだとつくづく感じたという。
「こんな状態になったから、私は無理するのはやめると夫に言い、寝室は別にしました。私が別室で寝ているのを知った娘が『パパとママ、ケンカしているの?』と言うから『パパがいびきをかくからママが眠れなくなっちゃうの』と話して納得してもらって。
別室にしたら少し気が楽になりましたね。夫もそうだったんじゃないかなと思います」
それでもアイさんのモヤモヤは晴れない。昨年秋、久しぶりに学生時代の友人たちが集まる機会があった。