「8人くらい来ましたね。当時つきあっていたヒロキもいました。嫌な別れ方をしたわけじゃないので懐かしくて、ヒロキとふたりで近況報告をしていたら周りにからかわれて。『不倫なんてやめとけよ』と言われてふたりで大笑い。今さらあり得ないでしょと言っていたんですが、帰りに『もう一軒だけいこうよ、ふたりで』とヒロキに誘われました。
ヒロキとの会話が楽しかったからもちろんOK。バーで飲みながら話して、それでますます別れづらくなった。酔った私から、『ワンナイトラブしよう』と持ちかけました。パーッと自分を解放したかったんです。ヒロキは『いいよ、1回だけな』って。いいやつでしょ」
そのままラブホテルへ行って、望み通り自らを解放した。帰宅したのは午前1時近かったという。
「リビングでひとりコーヒーを飲んでいたら夫が起きてきて。『楽しかった?』と言われてうんと答えました。すると夫はニコッと笑って、よかったと言ったんです。罪悪感はなかったけど、『ここでもし夫にバレたら、私も不倫していたということになるんだな』とぼんやり考えていました。不倫なんて、あっけない。やろうと思えばできちゃうものなんだと。
夫の場合、私の友だちだったのが心にひっかかっていましたけど、私が夫の友だちとそういうことになる可能性だってないわけではない。タイミングと状況の問題だけだなあ、と。そう考えたら、そもそも許す許さないという話でもないし、夫のしたことと私のしたことはこれで相殺(そうさい)と私が決めればいいだけだなと思いました」
翌日からアイさんは身も心も軽くなったような気がしたという。
朝早く起き、夫と自分の弁当を作る。夫が娘を保育園に送っていく。仕事をして保育園に迎えに行き、夕飯を作る。その間に夫が帰ってきて洗濯をしたり娘のめんどうを見たり。食後のあとかたづけは夫が率先してやってくれる。
「ふと俯瞰(ふかん)してみたら、なかなかいい家庭じゃないかと思いまして。夫は不倫後、変わったし。
そう思えたのも、自分が仕返しまがいの一夜を過ごしたからでしょうね。ヒロキとはその後、連絡をとっていません。ふたりで会うこともないと思います。でも私は確かにあの夜、救われたんだなと思います」
このコロナ禍を夫婦は協力して乗り越えようとがんばっている。去年から小学校に上がった娘の学校では現在、学級閉鎖を繰り返しており、夫婦はどちらかが在宅ワークできるように調整しあって仕事をしている。
「夫はマミに恋したわけではないし、私もヒロキと恋したわけではない。自分が元カレと一夜を過ごしてそれがわかったから、わだかまりもなくなりました。
もし夫婦どちらかが本気で誰かに恋をしたら、それはパートナーであっても止めようがないのかもしれない。そんなふうにも思いますね」
あくまで“浮気”であって本気でないなら、夫婦関係の修復は可能なのではないかとアイさん自身は感じているそうだ。
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<文/亀山早苗>
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