「家族は仲良しですよ。夫とはときに朝まで議論したりもする。別にむずかしいことを話しているわけじゃないんです。お笑い芸人のどっちがおもしろいかで、朝まで議論(笑)。友人たちからはバカにされています」
彼女はもちろん夫をきちんと「男として」見てもいる。それなのに、他の男性に心惹かれるといても立ってもいられなくなるのだという。
「実は夫は、私が恋すると行動を起こさずにいられないことを知っています。学生時代からのつきあいだから。
結婚するとき、『私、結婚しても恋愛しちゃうかもしれない』と言ったんですよ。そうしたら『それがアキノだからね』と言われました。
私は家庭の中では怪しい動きはしていないつもりだけど、夫はどこかで察知しているかもしれない。それでも何も言いません。夫と私の関係は変わらないとわかってくれているんだと思う」
ずいぶん身勝手でしょとアキノさんは笑った。だがその「身勝手」を貫ける人はそういない。
結婚後、3回、恋に落ちた。最初は結婚してすぐだったが、これは半年ほどで終わった。2度目は、今9歳の下の子が3歳だったころ。これは2年ほど「しっとりといい関係」が続いたあと話し合って別れた。
3度目は3年前から2年続いた関係。これがいちばんやっかいだった。やっかいだったのは相手との関係ではなく、アキノさん自身の気持ちの問題だ。

「初めて、何もかも捨てて彼と一緒になりたいという欲求がわいてしまったんです。彼は10歳年上の既婚者。セクシーで紳士で、本当に素敵な人だった。
仕事関係で知り合ったのですが、私から口説いたので、最初、向こうは軽い気持ちだったと思います。でもだんだん本気度が増してきた。いつもなら恋は恋として成就させると割り切れるはずの私も、彼と少しでも一緒にいたい、この先もと欲望が肥大しつづけていったんです」
とうとう、相手が妻にバレたと連絡してきた。こうなったら駆け落ちするしかない、誰もいないところへふたりで行こうということになった。
「彼といられるなら、今までの人生を振り捨ててもかまわない。どうしてそんな思考回路になったのか、今となっては不思議なんですが、そのときはその思いに凝り固まってしまった。
今すぐ逃げようとなって、ろくに荷物をもたないまま貯金通帳と印鑑だけもって夜中に家を出ました。寝ている子どもたちや夫の顔さえ見なかった。彼が車で家の近くまで来てくれて、そのまま東京から離れました」